ep.30 ページ31
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……幸せってこういうことや。
皆と居った時にはなかった「家族」。
私の知らない「家族」。
もちろんこれが正しい「家族」の形やとは思わへんけど、前よかずっとちゃんとした「家族」に近い。
……アーセナルに、好かれたかった。
人として贔屓され、特別視され、所有されたかった。
でもそれをしてたのは私やった。
人として贔屓し、特別視して、所有しようと藻掻いていた。
こんな私をもう皆が、記憶の中で悪女として処理し始めている頃合いかな。
ごめんなさい私皆に助けてもらったのに。
ごめんなさい私皆に育ててもらったのに。
ごめんなさい私皆に恩があるのに。
ごめんなさい私あなたに名前を貰ったのに。
父親であるマックがここを訪ねて来ないから、安心している部分もある。
住民票を移してるし、親やから調べよう思うたらきっと調べられんねやろうし、きっと知っている。
でも一年経った今でも連れ戻されには来ていない。
よかった、ちゃんと嫌ってくれたんやな。
当然のことをしたんやから、当たり前や、と思うけど、寂しい気もして……でも例えマックが来ても他の誰が来ても、私はもう彼処には戻らない。戻れない。
こんな平穏を知ってしまったら、あの喧騒の方から私を拒否する。
もう何もかもあの時の私ではない。
私は片思いのために始末屋をしていたのだ。
「家族」で居りたいから、「夫婦」で居りたいから、脅し、嗤い、騙し、殺した。
罪は消えない。
別にアーセナルや皆のせいにするつもりはない。
ただ、私の信念やら自己の薄弱が招いたことだ。
でも、それでも私は今許しを欲している。
彼との未来はもう開けている。
何があるか分からない道をただ進んでいた私にとっては、あの言葉の一言一言がただ美しく、嬉しい。
ファミレスの重い扉を開け、席を案内される。
奥まったボックス席からは、すっかり日の落ち暗くなった国道が見えていた。
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作者名：ゆうみ | 作成日時：2020年8月22日 11時
