ep.27 ページ28
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セーラの存在の大きさに、今更ながら本人も俺たちも気が付いた。
セーラが名前を貰って生かされてると思うてた。
でもほんまは、セーラがアーセナルを生かしていた。
あの気難しく生きにくい性格のあの人を、生き永らえさせていた。
セーラがあんな大変な人にずっと食らいつき続けたから、アーセナルは、俺たち8人は上手くやれたんやないか。
そんな悲しい現実。
きっとアーセナルはセーラの思いを知っていた。
知っててわざと黙っていた。
それがあの子には耐えられへんかったんやな。
………でも俺は、それでもセーラは贅沢やと思う。
好いた人と書類上だけでも一緒になって、それだけでもえらいことやのに、本物を求めて自滅した。
俺とは違う種類の馬鹿。
どうしてアーセナルが態度で示さへんのか、なんで分からんのかな。
あの人はセーラによって生かされてたんやから、そんなこと出来る訳ない。
セーラを壊すことも、自分の背負ったカルマを背負わせることも。
それが全てセーラを苦しめると解ってて、セーラが押し潰されてしまったら自分も共倒れになるって思うたからや。
セーラの思うことも、わかる。
リスクを冒して、自分を愛してほしかった。
でも自分のことは見てくれない。
つらい、苦しい。
結局、アーセナルは読み間違えたんやな。
素直に楽しく夫婦やっとけばよかったものを、何年も何年も時間を浪費させて、摩耗させ、自滅させてしまった。
そのせいで最終的にはやっぱり共倒れや。
セーラは馬鹿やから、長い時間待ってしまったし、してない約束まで守ってもうたし、それでもアーセナルを好きなまま。
きっと今も変わらないんやと思う。それだけは。
もっとうまく操縦してやっていれば、どっちも不幸にならへんかったと違うかな。
適度に寝たり好意を匂わせたりして、気楽に。
………ふたりともあんな見た目で、中身は真面目やから、やっぱりそんなこと出来るはずない。
永遠の恋人になれるか、はたまたお互いを殺し合うか、それしかない。
俺は、あの時間が永久に遠くへ行ってしまったことが悲しい。
誰のモノにもなれず、誰のモノにもならへんかったセーラ。
刺青のように、セーラの心にはアーセナルの横顔が刻まれていて、右手にはサブマシンガンが握られていた長くも短かかった泡沫。
可哀想なセーラ。
でもその年月の間、セーラは誰より清純やったよ。
修道女みたく、聖母みたいに。
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作者名：ゆうみ | 作成日時：2020年8月22日 11時
