道徳的な「僕」の話【緑】 ページ28
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狡いな、と思う。
あんなに片思いしてた君やのに、さっさと乗り換えてまうなんてさ。
しかも相手ヤスやし。よりにもよって。
いや……まあ、選ぶ気持ちも分かる。
それに前はいざ知らず、今のAちゃんはヤスにお似合いやと思う。
贔屓目なしに。
二人とも、凪いだ湖みたいな、穏やかさとやさしさがある。
でも、俺はどうしてもそれが許せない。
Aが激しい気性と気まぐれと魔性を、内に持っているのをよう知ってる。
それらが今封印されて、ヤスの気に入るようになってるとしても、そんなものは偽物で……。
いや、負けた奴が何言うてんねやって感じやな。
やけど長い間、片思いの捌け口として、この馬鹿みたいに強いこの人の、変に弱い所を見てきた。
やのに、長いこと一緒に居っても、俺には許与されへんかった色々が、その片思いを飛び越えて、全く違う新規に、惜しげもなく降る注いでいるのをみると鬱々とする。
あの日以来、僕たちは寝ていない。
Aはヤスに一途や。それも腹立たしい。
横山くんへの片思い時は俺とも寝ていたのに。
ヤスの特別性が際立っていらっとする。
そもそも、あの二人は別段仲が良い訳やなかったのに。
……考えても仕方のないことやのは分かっている。
横山くんにせよ、ヤスにせよ、俺は選ばれていない。
一番にもなれず、かといって明確に二番、と俺に番号が振られている訳でもない。
「やから、私に執着せんと違う女の子と楽しくやればええやんか。
私に期待してもほんま、無駄やで。」
「やから、大倉くんにはええ人が居るって。
気持ちは嬉しいんやけど、やっぱり不誠実なことは出来へん」
前と言うていることは変わっていない。
本心は分かれへんけど。
この人はずっと素直やった。
横柄な言葉も強い口調も我儘な態度も、酷かったけど、つまりそれは裏がないことの証明でもあった。
今の方が不気味や。
腹の中で何を考えているのか読めない。
目もどこか彼方を見ているような気がした。
Aはよく笑うようになった。
自分のために笑っているように思う。
希少価値があったものはすべて消え去り、「星名Aのようなもの」だけが残った。
俺はこの人の、棘立って孤独な背中を、愛していたと気づいた。
その背中を休める場所になれればいいと願っていたことが、今更ながらに解って、心臓が嫌な歪み方をした。
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みき(プロフ) - お返事ありがとうございます！2もこれから読ませて頂きます！楽しみです！ (2020年8月19日 8時) (
レス) id: eb998853f9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ(プロフ) - みきさん» 更新しました。応援を頂いて更に頑張ります！続編もよろしくお願いします！ (2020年8月17日 23時) (レス) id: 8ee4399846 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 更新ありがとうございます！私の予想してなかった展開で、この先が楽しみです！ゆうみさんの挑戦、応援してます！ (2020年8月16日 17時) (レス) id: eb998853f9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ(プロフ) - みきさん» 更新しました…！これから自分としては少し挑戦なので、コメントも楽しみにしています！ (2020年8月16日 11時) (レス) id: 8ee4399846 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ(プロフ) - 世利菜さん» コメントありがとうございます！ 読んで頂けて嬉しいです。これからも色々進んでいきますのでまた感想頂けたら嬉しいです！ (2020年8月16日 11時) (レス) id: 8ee4399846 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆうみ | 作成日時：2020年5月29日 14時
