【6】宮野さん(女)はえいとでした【人妻編】 (ページ8)

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⑧旅立つ夢【緑】ページ8

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緑Side

Aちゃんが引退した。

思えば9月に引退を発表して、11月に結婚することにして、それから今日に至るまで俺たちは、アクセル全開で走ってきた。

普通のカップルが半年かけることを、2ヶ月でやったんやからすごいと思う。

顔合わせして、結納して、式場確保して、とりあえず和装の写真を撮ってみて、それを年賀状プラスご報告ハガキにして…

やから、忘れてたというか。

宮野Aというアイドルがこの世界から居なくなる重さ、というのを。

リハには大勢の先輩や後輩が来た。
皆、カウコンで当日は来れないからといって丸でファンみたいに歓声をくれた。

いよいよ本番。

ベースを弾くAちゃんの背中は最高に格好よくて、それで気付いた。

あ、これはもう見られないんやって。

ユニットコーナーでは全員とAちゃんの好きな曲を歌う、通称・私利私欲コーナー(Aちゃん命名)。

ここで他の既成ユニットに混ぜてもらったり、昔のリバイバルしたり、グループの曲をユニットでやったりっていう案も出てたんやけど、Aちゃんは

「グループのは皆で歌いたいし、ユニットは思い入れのあるファンも多いから」

とカバーにすることになった。

こういう所がAちゃんの完璧たる所以やと思う。

俺とのユニットは「愛なんだ」。

これは自分で提案した。

やって、ぴったりやん。

きっとここから愛なんだ
始めることが愛なんだ

我ながらその通りやわ。

Aちゃんはユニット曲決めの会議で、

「あー！私も好き！！ええね、それにしよ！
おーくらさんと元気で、明るい曲ってないもんな！」

とご機嫌に決定した後、「…そういうことか……」と察していた。

紅白とカウコンは中継で、裏で俺に

「エイターしかおらん完全ホームで最後出られるなんて最高やわ」

と呟いてみせたり、ずっと笑顔やった。

俺はそれが堪らなく嬉しかったけど、それが終わりの中で見せる笑顔やと気づき始めていたから、何だか切なくて仕方なかった。

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