（3）僕の知らない笑顔【青】 ページ14
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青Side
やっと一息つけそうやから、お昼でも一緒にどう？
話したいことめっちゃあんねん笑。
久々に入ったメールは、
『章ちゃんの都合のええ時教えてな』
と結ばれていた。
あの日以来初めて会うAちゃんは…………僕の知らない笑い方をした。
エクステで延ばしたというボブを軽く揺らし
「去年も冬はドラマでボブやったね
冬はボブって決めてる人みたいやない？」
と言い、今日までの苦労を切々と語ってみせた。
式しかやらないし、招待する人たちには
教会押さえた時点で日時教えてるけど
招待状も作らんとあかんくて、大変やったこと。
ドレス選びが果てしなさすぎて、スーツで出たくなったこと。
選んだドレスに短髪が似合わず、美容院に飛び込んだこと。
でも指輪はぱっと決まったこと。
新婚旅行は国内の温泉にしたこと。
予約する時に「宮野」で予約してしまったこと。
新居はAちゃんが見に行って、良かったところだけもう一回二人で見に行くルーティンやったこと。
引っ越しの準備も大変で、旅行終わったら入居すること。
これらは全部時間が無いので事前によく話し合いしてから決めたこと。
相槌して、ちゃんと聞いててもこの「愚痴」は、どこかふわふわと夢の話みたいに聞こえる。
なんかリアリティがないというか。
届いた年賀状のことを思い出す。
二人ならんで、袴と白無垢。
新婚旅行は旅館で2泊、露天風呂の付いた離れ。
ーーーどれも静かに心が傷んだ。
なんで僕はこんなことを聞かされてるんやろう。
いや、自分でこの道を選んでんねやけど。
Aちゃんは選ばれた。
でも自分も選んだことにあまり気づいていない。
こういうこと聞かされるって分かってたのに、やっぱり会いたくて来てしもうた阿呆さに、僕は自分で自分に飽き飽きした。
毎日取材でAちゃんの話が出る。
恋しくて、
声を聞きたくて、
存在を確かめたくて。
傷つくことが分かっていたって、
それでも僕は、Aちゃんに会いたかった。
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作者名：ゆうみ | 作成日時：2019年3月26日 23時
