【5】宮野さん(女)はえいとです【唐突編】 (ページ19)

今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:55,868 hit

⑭麗しのヴィーナスはページ19

.

マネのカノちゃんside

結婚(予定)会見が終わり、いよいよ卒業コンサートに向けて急ピッチで全てが進み始めた。

演出に関してはかなり、宮野さんが関わることになり、ただでさえ、忙しい宮野さんの色々を削り取っていっているようだった。

ファンが絡むと、何も手を抜けない人なので、かなり無理をしていたが、それすらも止めてはならないと思った。

何回も重ねられてきた演出会議。

私の手元には一番初めに提出されたセトリ案、アンコールまで含めて30曲。

………マネージャーとして、色々体験させてもらった。

あなたは決して仕事を断らなかった。

どこへ行っても感じが良かった。

いつでも全力だった。

女優一本にしろと囁かれても、アイドルで居続けた。

弱みを見せない完璧な人だった。

なのにメンバーの前では子供の、それこそ入所した時から変わらない、わがままな泣き虫だった。

皆それを知っていて、皆あなたが好きだった。

私は宮野Aという伝説の一瞬と共にあっただけだけれど、あなたが遠くに行ってしまうことが寂しくて仕方ない。

こんな人が本当に一般人になるなんて信じられないし、彼氏居ない歴年齢だった宮野さんが、いきなり全てすっ飛ばして人妻になるのも意味が分からない。

でもこれからのあなたを支えてくれる人が明確にいる状態で送り出せることに、少し今は安心している。

「母親にな、会見する前に、結婚するって電話してん。
まあ驚いてたわ。
でもちょっと我ながらヤバいとは思うてんねんで？
とりあえず、両家挨拶と顔合わせみたいのはしたんやけど
その時点で何も起こってないねん。
しかもこのまま年末まで行って婚姻届が出て、結婚式やることは決まってるけど、そこまで何もしない約束って、なあ？」

さっき笑いながら話していた内容を思い出す。

改めてすごい話だ。

引退して家庭に入る、極めて分かりやすい古典的去り方なのに、破天荒でこじれた形になっている。

もうむしろこの人らしい。

それにヴァージンロードを、本物のヴァージンで歩くつもりなのか、この人は。
本当に居るんだ。

.