かくして世界は切り替わりました

［44通目］ ページ9

弾は全てライの右手に命中した
どろり、と赤い血が広がる

「…利き手は外しておいた
さっさと手当てしてこい。邪魔だ」

淡々とした声が空気を震わせる
こんな状況下でもライは無表情だ
まあ、少し顔色が悪いが

初めての彼女の意思を持った暴力に背筋が凍る思いがした
任務の彼女は淡々とこなすが、今は相当怒っているのか殺気がダダ漏れだ

「バーボン、スコッチ
今度からは連帯責任だ。覚悟しとけよ」

すっと細められた目で突き刺すように見る
俺は震えそうな声を必死に抑えて笑みを作った
彼女に及第点を得た笑みだ

「…ええ、もちろん」
「忠告はしたから」

ふう、と彼女はため息を吐くと銃を懐にしまった
それから、先ほどの能面にような無表情がポロリと外れて笑みが広がる

「今から仕事に移るけど見学でもしてく？」

内心ホッとしながら苦笑いを返した

「いえ、遠慮しておきます
報告書を纏めなければなりませんし」
「そ、ざあんねん
だったらさっさと出た出た。邪魔」
「ええ、では」
「…あ！やっぱストップ」
「何か？」

ゆっくりとした動作で振り返るとヒロを指差して言った

「資料ナンバー2から4
あれ、徹夜でやったでしょ。
今日もどうせ徹夜するなら今日は帰っていいよ。」
「え、あ、はい」
「あはは、お疲れ」
「…おう、お疲れ」

ヒラヒラ手を振った彼女は振り返りざまには目が凍てつくような冷たい目だった

彼女の表情はくるくると変わる
それだけ感情が豊かなのか…それとも…

まあ、考えるだけ無駄だ



なぜなら明烏なのだから

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