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[40通目] ページ5

銃弾は彼女の頰を撫で、白い肌に細い真っ赤な線ができた

傷のできたカラスはそれはそれは楽しそうに

笑った

俺はその顔を見て全身に氷が入ったような感覚に陥った
事の重大さに気づいたのだ

もう“死”という逃げ道を閉ざしてしまった

「いいね、その顔
絶望に満ちていてありきたりでいて平凡だ」

カラカラと笑う彼女に呆然とする
なぜ彼女は笑っているのか、到底理解できない

クスクスと彼女1人の笑い声が響くが、不意にピタリと止んだ

「なんて、退屈な顔」

低く地を這う低い冷たい声
さっきとはあまりにも違う温度のない声だった
目は血のように赤黒く、視線は今までにみたこともないような鋭いものだった

「君のために1分も無駄にしたと思うと非合理的だったと思わざる得ない
その時間で敵組織で遊ぶこともできたはずなのに」

彼女は懐に手を入れナイフを取り出した
恐怖という冷たい手に心臓を鷲掴みにされていた俺はさらに身を硬くした

見下ろしてくる目が死よりも恐ろしい

「お嬢、迎えに」
「……遅い」
「すいません」
「いや、いいよ。八つ当たりだ
ウイスキーズに頼んでくれてありがとう」
「勿体ないお言葉です」

入ってきた若い男の声にカラスは俺から目を離した
ドクドクと心臓がなって、一周回って生を感じた

「荷物は丁重に運んでくれ
今から手続きに入る。やる事は分かるね?」
「はい」

男はそう返事をすると俺に手当てをしだした
カラスはどこかへ行ったらしく、姿が見えない

それにしても先ほどの会話
事務的なしかし、どこか信頼が滲む会話に違和感を覚えた

今の今まで恐怖に支配されていた頭はようやく回ったようだった

「あんたが思ってる事とか考えてることとか全部わかるよ」

手当てをしながら若い男が言った
素はこちらのようだ

「…そうか」
「へえ、あんたお嬢の睨みでも返事はできるんだ
惜しいな、あんたが死ぬなんて」
「……そうか」
「うっし、できた
アンタが気に入ったからいいこと教えてやるよ」
「…」
「相手はあの明烏だ。全部早く言った方が楽に逝けるぜ」
「………ああ」

よっと、と言いながら男は俺を担ぐ
処刑台に乗せられる死刑囚はこんな気持ちか、と思いながら車に乗せられる

数分揺られると男は車を止めた
組織のアジトだ

「最後に教えてくれないか……」
「…なんだ」
「君は何て名前だ?」

男は一瞬驚いたように目を見開き、ニヤリと笑った

「アベルだ」

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あかね(プロフ) - 更新待ってます! (2021年9月4日 12時) (レス) id: 0c2de8423c (このIDを非表示/違反報告)
アイリス(プロフ) - キカさん» ありがとうございます!頑張りますね (2019年9月27日 19時) (レス) id: 7e8dc5ebed (このIDを非表示/違反報告)
キカ - すごい面白かったです!これからどうなるのか楽しみすぎてやばいです!更新頑張ってください!応援しています。 (2019年9月27日 16時) (レス) id: 2047e5dc6b (このIDを非表示/違反報告)
アイリス(プロフ) - 栞さん» コメントありがとうございます!せっつかれないように頑張りますねw (2019年9月11日 10時) (レス) id: 7e8dc5ebed (このIDを非表示/違反報告)
- 面白かったです。更新頑張ってください!! (2019年9月11日 9時) (レス) id: c401117eec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くるクラ | 作成日時:2019年7月11日 12時

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