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no said

男は走っていた

吐く息が白く、街灯に照らされて光る
それでも走る
冷たい風が頰を叩くのを厭わず、撃たれた右足を引きづりながらも
男は走った

アスファルトに血が落ちる
血と共に命が削られていくようだ

チラリと純白の雪が男の視界に入る
その美しい結晶に
まるで貴方みたいと君が言ったのを思い出す

ああ、嫌だ
僕は生きたい…行きたい…君の元へ

ふと溢れた言葉は自分の中に深く浸透していく
思いも言葉に出して仕舞えば嫌でも実感してしまうのだ

角を曲がった時男は立ち止まった

……絶望と共に

袋小路の奥でそれは歌っていた
まるで上機嫌で待ち人を待っているかのように
いや、実際に待っていたのである

この男(俺)を…

「…ああ、やっときた
やあ、元CIAのお兄さん。待ってたよ」

それは女いや少女であった
深淵を写したような闇に染まった茶色の瞳
濡れ烏のような艶やかな黒髪
人形のように整った顔
至る所に巻き付けられている包帯

明烏である

嫌な汗が背筋を伝う
体温がどんどんと低くなっていく

「さて、悪いお兄さんの足は全部潰さないとね」

彼女が右手をあげると俺の左足が焼けるように痛んだ
遅れてくる熱を持った痛みに、声にならない叫びを出しながら膝をつく

どちらに重心をおいても走る激痛に堪らず床に伏した

「…上出来だ……は?ライが?
…わかった、ウイスキーズを地下室に呼べ
ああ…ああ、分かってる。荷物番は任せろ」

片耳を抑えながら話す少女に悪寒が走る
自分はどうなるのか、と恐怖心が駆け回った

「さてさて、お兄さんお話しようか」
「…お前のような犯罪者とは話す話もない…!」

精一杯の虚勢を込めて睨み返せば、クツリとカラスは笑う

「おやおや、随分と大層な言い分じゃあないか」

トン、と軽快に飛んでゴミ箱の上に座った
黒いタイトスカートが少しずれて黒いタイツが覗く

「私を犯罪者とのたまうのなら、君は最も愚かで醜い存在だ」
「っなんだと!?ぐっ…」

叫ぶように怒鳴ると足が痛んだ
その様子を見て彼女はさらに笑う

「もしかして、自分の罪が分からないのか?
いいや、そんなはずはない。なぜなら君は優秀だ
殺した人の顔を全て覚えているほどね」

ドクリと心臓が高鳴る
ーやめろ

「……ぅるさい」
「君は分かっているはずだ
殺した奴にも家族がいると」

「…うるさい」

「君の手は汚れている」

「うるさい!やめろ!」

拳銃を取り出し、カラスに向かって撃つ
最後の…自決用の弾だった

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あかね(プロフ) - 更新待ってます! (2021年9月4日 12時) (レス) id: 0c2de8423c (このIDを非表示/違反報告)
アイリス(プロフ) - キカさん» ありがとうございます!頑張りますね (2019年9月27日 19時) (レス) id: 7e8dc5ebed (このIDを非表示/違反報告)
キカ - すごい面白かったです!これからどうなるのか楽しみすぎてやばいです!更新頑張ってください!応援しています。 (2019年9月27日 16時) (レス) id: 2047e5dc6b (このIDを非表示/違反報告)
アイリス(プロフ) - 栞さん» コメントありがとうございます!せっつかれないように頑張りますねw (2019年9月11日 10時) (レス) id: 7e8dc5ebed (このIDを非表示/違反報告)
- 面白かったです。更新頑張ってください!! (2019年9月11日 9時) (レス) id: c401117eec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くるクラ | 作成日時:2019年7月11日 12時

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