質拾 ページ10
走っていくと、大きな部屋に出た。
そこには、剣心さんと左之助、それに斎藤さん。
知らない男の人もいた。
「ねぇ宗次郎…あの人誰？」
「静かに。志々雄さんにバレちゃうから。」
宗次郎が、志々雄を見つめながら人差し指を口の前で立てた。
そういえば…今気づいたけど、敬語じゃなくなってる。
やっと敬語じゃなくなったと思うと、嬉しかった。
愛おしくて、この手を離すのが辛い。
志々雄のところに行かせるのが辛い。
できればずっとここにいてほしい。
「ねぇ宗次郎…絶対に行かなきゃだめなの？」
「…僕がやらなきゃいけないんだ。」
やっと私を見て、宗次郎が微笑んだ。
「それじゃあ…行ってくる。」
「うん…行ってらっしゃい。絶対に無事で帰ってきてね…約束だよ…。」
「分かってる。Aを遺して死ぬことは絶対にありえない。僕を見ててね…」
そう言って私を抱きしめてくれた。
宗次郎の匂いが私を包み込む。
「うん…分かってるよ。」
私もその背中に手を回して、無我夢中で抱きしめた。
薄い背中だけど、しっかり筋肉はついている。
剣術に秀でているだけあって、腕力が強く、私を締め付ける力も強い。
本当はこれだけじゃ足りないくらいだけど、宗次郎の腕は緩まっていく。
仕方なく腕を離すと、宗次郎は何の躊躇いもなく、振り返らずに一直線で志々雄のもとへ向かっていく。
「お久しぶりです志々雄さん。また会えて光栄です。」
「なんの冗談だ。」
志々雄が嘲笑うかのように宗次郎に近づき見下ろす。
「僕…貴方を倒しに来たんですよ。」
「宗次郎…」
剣心さんが呟いた。
宗次郎がおもむろに刀を抜く。
「勝負してください。もちろん本気で。」
「随分と生意気だな。」
そう言いながらも、志々雄は刀を抜く。
「ああそうだ…緋村さん。もしも僕が危なくなったら、Aをよろしくお願いしますね。」
志々雄をその目で捉えたままで、宗次郎が言った。
その言葉に、喉の奥から込み上げるものがあって、視界がぼやけた。
死ぬのを…覚悟してるのかな？
嫌だよ…そんなの嫌だ。
私を遺して死なないって言ったじゃん。
絶対に…死なせない。
死なせないから。
もしも宗次郎が危なくなったら、助けに行くからね…
志々雄が刀を振ると、炎が出た。
宗次郎が片足で跳ねる。
私は宗次郎が勝つことを願いながら、その姿を見守っていた。
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キーさん(プロフ) - もう7年も前の作品だけど、いつか更新されることを願ってます！ (2021年8月19日 16時) (
レス) id: 1d2c287881 (このIDを非表示/違反報告)
╋雨降りジョーカー╋(プロフ) - 控えめに言って 神作品。作者さん凄すぎるわ...この作品は非の打ち所のないんだけど... (2018年10月17日 23時) (レス) id: 380c7fa183 (このIDを非表示/違反報告)
ユウ - とっっっても面白かったです！ 楽しい時間をありがとうございました！ (2016年12月20日 19時) (レス) id: 88676b10f6 (このIDを非表示/違反報告)
北山LOVE - チョー面白かった！宗次郎大好き！ (2016年12月10日 4時) (レス) id: 2b9049c483 (このIDを非表示/違反報告)
さくら - めっちゃ面白かったです。宗次郎が剣心の味方なのもいいですね！ありがとうございました。。 (2016年7月3日 1時) (レス) id: c21e049532 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：青りんご | 作成日時：2014年12月21日 10時
