陸拾玖 ページ9
揺さぶられて目を覚ました。
無理矢理目を開けると、目の前には白い立て襟シャツ。
見上げれば、綺麗に整った目と鼻があった。
寝てたんだ…私。
宗次郎に寄りかかって。
「A…起きて。そろそろ行かなくちゃ。志々雄さんは…僕が倒さなくちゃいけないんだ。」
そう言って私を見つめる。
その目は真剣で、いつもの冗談じゃないことは分かる。
それなら…私も支えなくちゃだね。
「うん、分かった。それじゃあ…はい、これ。」
腰に差してあった刀を抜いて宗次郎に渡す。
それを素直に受け取って、宗次郎はにっこり笑った。
「ありがとう。」
刀がない私は丸腰同然。
志々雄のところへ行くのは危険だ。
でも…私は最後まで宗次郎とずっと一緒に居たいから。
「私も行く。」
「そう言うと思った。」
変わらない笑顔で、私を立つように促す。
「さ、行こっか！」
宗次郎が刀を腰に差したのを確認して、宗次郎の手を持った。
すると、宗次郎は私の手を持ち返してくれる。
「はい。」
宗次郎のゴツゴツとした大きな手に包まれて、私たちは部屋を後にした。
ーーーーーー
「おうお前ら。なんだよボロボロじゃねえか…って、そんな警戒すんなよ。」
ゴトゴトと木の床を歩く足音が聞こえた。
宗次郎が私を後ろに隠し、刀に手をかけてくれてたのにも関わらず、出てきたのは左之助。
「相楽さんでしたか。すみません。」
刀から手を離し、軽く会釈をする宗次郎。
「びっくりした…そっちだってボロボロじゃん。大丈夫？」
「俺はこのくらい痛くも痒くもねえ。」
「そっか。」
こうやって普通に話をしていると、脳裏をよぎるのは神谷道場。
こんな風に、何気なく話ができるのはすごく幸せなんだ。
「俺は先行ってるぞ。剣心が待ってるんだよ。」
『剣心』という言葉を聞いて、宗次郎の表情が曇る。
いろいろな思いがこめられているはずだ。
左之助の背中が遠ざかっていく。
「行こう？」
宗次郎の手を、今度は私が両手で包み込む。
宗次郎が私を見て微笑んだ。
「ありがとう。A…いつもありがとう。」
その瞬間、私の唇に宗次郎の唇が重なった。
「ねぇA、行こう？」
驚く私を笑う宗次郎に連れられて、剣心さんの待つ部屋を目指して走り出した。
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キーさん(プロフ) - もう7年も前の作品だけど、いつか更新されることを願ってます！ (2021年8月19日 16時) (
レス) id: 1d2c287881 (このIDを非表示/違反報告)
╋雨降りジョーカー╋(プロフ) - 控えめに言って 神作品。作者さん凄すぎるわ...この作品は非の打ち所のないんだけど... (2018年10月17日 23時) (レス) id: 380c7fa183 (このIDを非表示/違反報告)
ユウ - とっっっても面白かったです！ 楽しい時間をありがとうございました！ (2016年12月20日 19時) (レス) id: 88676b10f6 (このIDを非表示/違反報告)
北山LOVE - チョー面白かった！宗次郎大好き！ (2016年12月10日 4時) (レス) id: 2b9049c483 (このIDを非表示/違反報告)
さくら - めっちゃ面白かったです。宗次郎が剣心の味方なのもいいですね！ありがとうございました。。 (2016年7月3日 1時) (レス) id: c21e049532 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：青りんご | 作成日時：2014年12月21日 10時
