陸拾伍 ページ5
二人とも夢中で刀を振っている。
私には気づいていないようだ。
…もしかしたら気づいてるのかもしれないけど、とにかく邪魔するのは悪い。
隅に隠れて様子を見守っていると、金属の音が止んだ。
あれ、と思い息を殺して見ていた。
「前より速くなったみたいですね。貴方が修行でやくを上げてきてくれたのなら…こちらも礼を尽くさないと。」
そう言うと、また戦いが始まった。
…最強同士が戦うと、こんなに迫力があるものなんだなぁと思う。
もはや美しくも感じる二人のその刀さばきは、志々雄が認めるのも納得がいく。
できれば引き分けで終わって欲しい。
どちらかに勝利をつけるなんて、そんなの残酷すぎる。
だけど、私の願いは届かない。
だんだんと剣心さんが優勢になってきた。
剣心さんの逆刃刀が宗次郎の手や腕にぶつかる。
痛そうに顔を歪める宗次郎。
「うぁっ……」
刀がぶつかる度に、そんな声を溢す。
「くっ………あぁ！」
宗次郎が壁に弾き飛ばされた。
思わず宗次郎の元へ走っていきそうになるけど、ぐっと我慢した。
宗次郎が咳をして、ゆっくりと立ち上がる。
「あれ…？あれ？おかしいな………」
無理矢理の笑顔だ。
今にも泣き出しそう。
『あれ？』や『おかしいな』と言い続け、その度に首をかしげながら笑っている。
「強さだけでは生きてはいけぬ。」
髪の毛もボサボサになり、書生服の白い立て襟シャツのボタンは取れて、鎖骨まで開いている。
「イライラするなぁ…！！！」
突然大声を上げたせいで、体がビクッと跳ねる。
そうだよね…
志々雄にも負けて、剣心さんにも負けて、価値観まで否定されたら…
考えるだけでも気が狂いそうだ。
自分の持っているものを全否定されたら、私だってああなるかもしれない。
今すぐ宗次郎を抱き締めたい。
けど、それはきっと今じゃない。
「所詮この世は弱肉強食…強ければ生き、弱ければ死ぬだけだ！！」
宗次郎がもう一度剣心さんに刀を振る。
「強ければ生き…」
「弱ければ死ぬ…！」
また刀を跳ね返させられ、よろけて壁にぶつかった。
…ダメだ。
見てられない。
胸が苦しくて、耐えられない。
今行ってはいけないのは分かってる。
だけど…もう無理だ……
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キーさん(プロフ) - もう7年も前の作品だけど、いつか更新されることを願ってます！ (2021年8月19日 16時) (
レス) id: 1d2c287881 (このIDを非表示/違反報告)
╋雨降りジョーカー╋(プロフ) - 控えめに言って 神作品。作者さん凄すぎるわ...この作品は非の打ち所のないんだけど... (2018年10月17日 23時) (レス) id: 380c7fa183 (このIDを非表示/違反報告)
ユウ - とっっっても面白かったです！ 楽しい時間をありがとうございました！ (2016年12月20日 19時) (レス) id: 88676b10f6 (このIDを非表示/違反報告)
北山LOVE - チョー面白かった！宗次郎大好き！ (2016年12月10日 4時) (レス) id: 2b9049c483 (このIDを非表示/違反報告)
さくら - めっちゃ面白かったです。宗次郎が剣心の味方なのもいいですね！ありがとうございました。。 (2016年7月3日 1時) (レス) id: c21e049532 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：青りんご | 作成日時：2014年12月21日 10時
