捌拾壱 ページ20
ものすごい嫌味のこもった言葉だ。
伊藤博文が不機嫌そうに顔をしかめた。
「おう！！そうだそうだ！もっと言ってやれ宗次郎！！！」
「宗次郎。左之。」
剣心さんがそう一声かけると、宗次郎はフッと微笑み下を見た。
左之助も、どこか不服そうな顔で弥彦の頭をくしゃっと撫でる。
「…なんだよ……」
弥彦は不機嫌そうな声でその手を払いのけた。
「志々雄は死んだか。」
「満足でござろう？」
「志々雄」という単語が出てきて、何気なく海を見る。
…志々雄の船が沈んでいく。
なんだかあっけなかったな…。
あれだけ力を伸ばしていた志々雄が、最期は船ごと沈むんだから。
もう…この剣術も要らなくなるのかな？
寂しいな…。
もう戦えなくなるのも、寂しい。
そんなふうに考え事をしていると、ハッと我に返って剣心さんたちの方を見る。
隣には宗次郎。
いつもと変わらない。
でも、その「いつもの」が幸せなんだよね。
もしあの時…宗次郎の刀が折れた時に私が志々雄との間に入らなかったら、今ここに宗次郎はいない。
傷だらけでも何でも、生きててくれて本当に嬉しい。
だから、「いつもと変わらない幸せ」が心から分かる。
本当にありがとう。
あ…また自分の世界に入っちゃってたな。
一歩宗次郎に近づき、手を前で組む。
伊藤博文の後ろに何人かの警察官がいる。
これから何が起こるんだろう…。
楽しみだな。
「侍たちに、敬礼！！」
一糸乱れぬ綺麗な敬礼に、しばらく見入っていた。
…「士族」じゃなくて「侍」って言ってくれたことが少し嬉しい。
なんとなく士族って…時代に乗り遅れた人みたいな、馬鹿にされた感じで嫌だったから。
この明治という新時代を創り上げたのは侍のおかげだ。
まあ私はもともと武家の子じゃないんだけと。
だからこそ、刀を持って戦う侍になりたかった。憧れてた。
強くなりたかったし。
でもたくさんの人を斬っても、誇りを持って侍とは言えなかった。
だけど今は…認めてくれた気がした。
何も言えずにただ見つめていると、薫が喋り出した。
「…さ、帰りましょ。」
それを合図に、皆んなが動き出す。
「行こう。」
私より先に動き出したのは宗次郎。
手首を掴んで動き出した。
「ありがとう。」
なんとなく伊藤博文にそう言うと、伊藤博文が少しだけ笑った。
疲れ切った体を癒すため、私たちは帰路を急いだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 233人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
キーさん(プロフ) - もう7年も前の作品だけど、いつか更新されることを願ってます！ (2021年8月19日 16時) (
レス) id: 1d2c287881 (このIDを非表示/違反報告)
╋雨降りジョーカー╋(プロフ) - 控えめに言って 神作品。作者さん凄すぎるわ...この作品は非の打ち所のないんだけど... (2018年10月17日 23時) (レス) id: 380c7fa183 (このIDを非表示/違反報告)
ユウ - とっっっても面白かったです！ 楽しい時間をありがとうございました！ (2016年12月20日 19時) (レス) id: 88676b10f6 (このIDを非表示/違反報告)
北山LOVE - チョー面白かった！宗次郎大好き！ (2016年12月10日 4時) (レス) id: 2b9049c483 (このIDを非表示/違反報告)
さくら - めっちゃ面白かったです。宗次郎が剣心の味方なのもいいですね！ありがとうございました。。 (2016年7月3日 1時) (レス) id: c21e049532 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：青りんご | 作成日時：2014年12月21日 10時
