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質拾捌 ページ17

宗次郎side




「ちゃんと僕にしがみ付いててくださいね。」


「は?」



驚くAの肩を抱いて助走をつけて海に飛び込んだ。





落下途中に、Aが僕の背中に手を回してしがみつく。

「う…うぅ……!!!」






心臓が浮くような感覚がAを襲っているのだろう。

僕の背中を締める腕の力が強まった。




「息止めて…無理なら鼻をつまんで。」






もうすぐ海に落ちる。
Aの首の衝撃を和らげるために、僕の手でAの頭を胸に押し付け固定する。


その頭の上に僕の頭を乗せるような体勢で、水に突っ込んでいった。




Aが息を止めたかどうかは分からないけど…早く海面まで上がらないと。


船の底が見える。




Aの手を引っぱりながら水を掻いて上を目指した。

Aも僕と同じように足をバタバタさせながら泳いでいる。





目が痛い。
塩水のせいかもしれない。

手を伸ばして船の縁を掴んだ。





まず初めに空気を吸い、それからまた潜ってAの腰を持ち海面に引き上げた。




「…ぷはっ……!」



船の縁を持たせる。



「……持ってて…僕が先に上がるから…」





「……うん……うん!分かっ…た……」



何度も頷き、しっかりと縁を握ったようだ。







最後の力を振り絞り、ぐっと腕に力を入れてなんとか船に上がった。



そしてAの片腕を持ち上げる。







船の縁からずぶ濡れのAが見えた。
彼女も俯き加減に苦しそうな表情を浮かべながら船に上がってきた。




「はぁ……はぁ……」





しばらくはAの息の音が聞こえていた。
僕はもう大丈夫だ。


「おいおめえら!!!もう大丈夫か!?」




上からそんな声が聞こえて見上げる。

「大丈夫です!!!!!!」




こんなに声を張り上げたのも久しぶりだ。




Aがふふっと笑った。
そっとAを見ると、また笑った。




「あ…いや、ごめん。こんな大声出す宗次郎って見たことなかったから嬉しくて…」

ニコニコと笑いながら。





可愛いこと言うなあ…




「僕も二人で戻れて幸せだよ…」






だよ、なんて他の人には言ったことなかった。
Aは…特別だから。




そうだね、と返事をして笑うAの唇に、僕の唇を軽く乗せた。


そして離れると、Aが僕の頬を両手で包み、唇が触れ合う。



いつもそういうことには積極的ではないAの行動に驚きながらも。



僕はその肩を抱き締めた。

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設定タグ:るろうに剣心 , 瀬田宗次郎 , 神木隆之介   
作品ジャンル:恋愛
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キーさん(プロフ) - もう7年も前の作品だけど、いつか更新されることを願ってます! (2021年8月19日 16時) (レス) id: 1d2c287881 (このIDを非表示/違反報告)
╋雨降りジョーカー╋(プロフ) - 控えめに言って 神作品。作者さん凄すぎるわ...この作品は非の打ち所のないんだけど... (2018年10月17日 23時) (レス) id: 380c7fa183 (このIDを非表示/違反報告)
ユウ - とっっっても面白かったです! 楽しい時間をありがとうございました! (2016年12月20日 19時) (レス) id: 88676b10f6 (このIDを非表示/違反報告)
北山LOVE - チョー面白かった!宗次郎大好き! (2016年12月10日 4時) (レス) id: 2b9049c483 (このIDを非表示/違反報告)
さくら - めっちゃ面白かったです。宗次郎が剣心の味方なのもいいですね!ありがとうございました。。 (2016年7月3日 1時) (レス) id: c21e049532 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:青りんご | 作成日時:2014年12月21日 10時

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