るろうに剣心もう一つの伝説《瀬田宗次郎編》《京都大火編》《伝説の最後編》 (ページ39)

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伍什ページ39

桶に入った水を持っている。

「何話してたの？」

水に手ぬぐいを浸しながら聞いてくる薫。

そっと左之助を見ると、両手でバツを作り、首を振っていた。

弥彦を見ると、目を大きく開いて手を顔の前で振っている。

「な、なんでもないよ。全然関係ないし。」

すると薫はゆっくりと私の方を見た。

「な…何？」

「関係ないって何よ。話しなさいよ。」

その時、左之助が後ろから私を突き飛ばして薫の前に出る。

「いや！本当に何でもねえんだ！なぁ弥彦！優月！」

「お、おう！」

「もちろん！」

…なんで隠してるんだろう？

「怪しいわね……何なのよ。」

鋭い眼力に負けたらしく、左之助からゴーサインが出た。

「あの…剣心さんが指名手配されてるんだよね…」

「なんですって！？」

宗次郎そっちのけで私に詰め寄ってきた。

「詳しく話しなさいよ！」

「う、うん…。志々雄が政府に…剣心さんを民衆の前で晒し首にしろって言って、政府がそれを承諾したんだよ。」

「あいつらがやりそうなことだな…」

左之助がちょうどそう言った時だった。

外が騒がしい。

薫はそれが何かを察したらしく、冷たい手ぬぐいを宗次郎の額に乗せて、外へ走っていった。

「宗次郎…すぐ戻ってくるからね…」

私も宗次郎にそれだけ言って薫の後を追う。

その後ろから左之助と弥彦が追ってきていることは何となく分かった。

予想通り、人だかりができていて。

そこの一番外側に薫はいた。

「薫！」

そう呼んでも聞こえないようだ。

薫に追いつき、肩を叩くとビクッとして振り向いた。

「A…剣心が…………」

目に涙を浮かべている。

その少し後、左之助と弥彦がやってきた。
「おい…本当だったのかよ……でも待てよ。指名手配されてるって事は…生きてるってことじゃねえのか！？」

…そうだ！
確かにそうだよ！

生きてるってことだよ！！

なんで今まで気づかなかったんだろう？

「その通りだ！薫喜べ！剣心は生きてるぞ！！」

「それは嬉しい…でも…」

「まあ剣心ならそう簡単に捕まらねえよ。な、優月！」

「そうそう！剣心さんなら平気だよ！」

「おう！俺もそう思う！」
私と左之助と弥彦でそう励ますも、薫になかなか元気が戻らない。

「大丈夫だって！」

私たちは薫の背中を叩き、道場へ戻っていった。