るろうに剣心もう一つの伝説《瀬田宗次郎編》《京都大火編》《伝説の最後編》 (ページ28)

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参什八ページ28

そんな…

これじゃあ手は出せない。

薫は硬直してる。
だから、安心させてあげられるように自分の刀を鞘に収めた。

「死体は捨てておけ。女はこの部屋に入れろ。A…お前はこっちに来い。」

それだけ言うと、すぐに部屋から出て行ってしまった。

志々雄の手下達が死体を持ち上げた。

「うっ……」

薫が、無惨に殺された死体を見て口を手で押さえる。

「薫、必ず助けに来るからね…。それまでは自分の身は自分で守ること。じゃあね。」

無理矢理笑顔を作ってみるけど、きっと上手く笑えてない。

「A……」

最後に聞いたのは小さく呟いたその声。

それと同時に扉が閉ざされた。

刀を左手で抑え、見えなくなりそうな志々雄の背中を追った。

そしてある部屋の前に連れてこられた。

「いいか、お前は俺以外の前では男として振舞え。」

「はい…」

なんとなく敬語になっちゃうけど、何してるんだろうな…私は。

でもどうして、志々雄は私の本名を知ってるんだろう…

私が女だってことも。

「あの…なんで私の本名を…」

「黙れ。いいから、お前は俺が言うまで喋るなよ。」

「はい。」

言ったことを遮られて、少しイラついた。

本当に自分勝手なんだから…

志々雄が扉に手をかける。

その奥に広がる光景に、私は少しびっくりした。

綺麗な女の人が立っていたから。

てっきりこの船には男しかいないのかと思ってた。

花魁の格好をした女の人。

「連れてきたぞ。西條だ。」

「ああ、この人が…。」

私は何も言わずに、ペコリと頭を下げた。

「宗次郎、出てこい。」

え…

いるの？宗次郎が…

でも、喋っちゃいけないんだ。

興奮して喋りそうになる口を抑え、志々雄の目線の先を見る。

そこには部屋があって、扉が閉まっている。

しばらくして、その扉が開けられた。