体感する凄さ ページ17
KA side
ニョルヒョンが
元気よく声をあげて
Magic Nightを
リクエストして
まぁ俺もそれが見たかったけど
なんだか
デルヌナの視界に
少しでも
映り込めた
ヒョンが羨ましかった
全米を
熱狂させたヒット曲
KAISERの名を一気に世界に広めた
ふたりは
長いニットカーデを脱ぎ
ニット帽とサングラスを
外して
黒いサテンの布で
目を覆って
ハットをかぶった
目には見えないけれど
空気が
張り詰めた
誰かが息を飲むのを感じた
目隠しをしているので
お互いの距離も位置も
わからないはずなのに
どうしてなんだ?
部屋の中心に合わせて
均等に
位置についた
デルヌナが
片手を上げた瞬間に
メロディが流れると
滑らかに踊りだすふたり
怖いくらいに
シンクロする動き
止まることのないステップ
マイクも使わず
歌い出す
その声は
響き渡り
心を震わせた
全てがカッコよくて
一つ一つの仕草が
パフォーマンスを
構成していて
引き込まれた
ふたりの表情は
口元しかわからないのに
時に楽しそうに
時に妖艶に
色を変えた
一緒に踊りたい
いや
きっと今のレベルでは
ただのバックダンサーにもなれない
邪魔なだけだ
同じステージに立てるくらい
もっともっと上手くなりたい
たった4分半なのに
俺には永遠のように感じて
動けなくなった
一瞬たりとも
手を抜かず
激しいダンスと共に
マイク無しで
歌い終えたはずなのに
息も上げず
ぴたりと
最後に決めたKAISER
世界を相手に
最高のパフォーマンスを
届けてきたふたりとの
レベルの差に
誰もが
圧倒された
無言で
デルヌナとダルヒョンは
ハットと目隠しを外して
髪をかきあげ
ピアノへ向かうヌナ
ギターを手にするヒョン
背中合わせで座り
合図もなく
奏でられるメロディ
それは
打って変わって
穏やかな曲調
デルヌナの伸びやかな歌声
ダルヒョンの優しい歌声が
折り重なって
英語がわからない俺でも
伝わってくる
切なさ
寂しさ
虚しさ
これほどの実力
想像以上で
憧れである
ふたり
さらには
淡い希望すらないヌナへの想い
それらは
ヌナとヒョンの
目には見えない
絶対的信頼感を
嫌でも感じさせ
戦わずして敗北感を俺に残した…
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作者名:リン | 作成日時:2015年3月14日 23時