【文スト】境界の栞 Ⅳ【太宰治】 (ページ6)

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《翌日・敦side》
鳥の囀りで目が覚める。孤児院の起床喇叭は？早朝点呼は？ぼんやりとした意識の中、そんな疑問が泡のように浮かんでは消えていく。最終的に、一つだけポツリと口にした。

「ここ、どこだ……？」

そんな疑問に応えたのか、携帯が電子音を響かせ敦を驚かせる。相手は太宰だ。

「は、はい？」

｛やあ敦君。新しい下宿寮はどうだい？善く眠れた？｝

「お蔭様で……(そうか、僕は……)」

太宰の声で自分が保護されたことを思い出した敦。若干しんみりしながら答えた。

「こんな大層な寮を紹介いただいて」

｛それは好かった。……ところで、頼みがあるのだが｝

「？」

｛……助けて、死にそう｝

《探偵社事務室》
『よーし……こんなもんか』

此方準備部隊、治が敦君を迎えに行ってる間に最終チェックに入ってまーす。

「それは何だ？」

『何って……手だけど』

「何に使う心算だ！？」

私が作ったのはお手製腕人形だ。あのナオミちゃんの持ってた奴ね。

『爆弾魔を確保、嗚呼安心！ってところでこれを使ってドンって敦君を押して起爆装置を起動。どう動いてくれるかなってね』

「緊急事態への対応を見る訳か」

『そういう事』

私はそれを無造作にぽいっとスキマへ放り込むと、ぱんぱんと手を叩いて立ち上がった。

『却説……そろそろ時間かな。迎えに行こうか』

「待て、拘束はどうする？間に合うのか？」

『十秒あればいい』

「……。」

頭を抱える国木田君はスルーしスキマを展開。キッカリ時間通りだ。

『よろしくね、国木田君』

「判っている」

私は送り出しスキマを閉じると、爆弾の最終調整に入った。

『起爆装置は……動く。ここに置いてっと……』

爆弾脅迫なのにタイマー動かないとかどんな冗談だって話だからね。大事大事。
耳に付けていたインカムを叩く音。スキマを開けば治が入って来た。

『全部OK。釦はこれ、縄と狐面こっち』

「ありがとう」

治はガッチガチ、私でもすぐ解けない程厳重に私を後ろ手に拘束した。……ん？これやり過ぎ、じゃ……

『治さん？この強度は何ですかね？』

「臨場感、大事かと思って」

治はニヤニヤしながらそう云った。否、絶対やりたかっただけよね！？

「少し待ってて。すぐ着替えてくるよ」

治は事務室を出ると、本当に直ぐ……五分程で戻ってきた。