【文スト】境界の栞 Ⅳ【太宰治】 (ページ41)

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169葉ページ41

「……仕事？」

『違うよ、あなたも年頃の女の子でしょう？女子会やりたいなー……なんて』

「女子会……」

『直ぐには集まらないだろうし少し出掛けよう？』

「いいの？勝手に出歩いて」

『これでも芥川君より偉いから大丈夫』

今後の為に社会勉強しておくのも大事だろうしね。

『何処か行きたい所ある？』

「……特には、ない」

『だよねぇー……私も特にない』

あれ？早速詰んでない？

『じゃあ兎喫茶でも行こうか』

「兎……！あ、でもこの服……」

彼女が躊躇いがちに見下ろした和服には返り血が飛び散っている。このまま出歩けば間違いなく軍警にお縄だろう。

『んー……姐さんのとこで着替えた方が良さそうだね』

「午後まで任務でいない」

『成る程。首領は論外、中也が持ってる筈もなし……うん、作るか』

「作る？」

『私の服を仕立て直せば着られるよ。洋服で良ければだけど……大丈夫？』

こくりと頷いたのを確認し、彼女を連れ自宅に移動する。置いたままだったミシンで持ってきた服をだだっと仕立て直すといい感じになった。

『いいかなこれで』

「早い……」

『よく云われるよ。そっちに私の部屋があるから着替えておいで』

「こっちは？」

『…………同僚の部屋。勝手に入ると面倒臭いから止めときな』

「判った」

何とか誤魔化し、私はベランダで煙草を吸いながら兎喫茶について調べる。すると鏡花ちゃんは思ったより大分早く戻ってきた。

「どう？」

『うん、似合ってる。行こっか』

調べていた場所まで移動。二人分払って入ると、彼女は頬を緩めて兎を撫でていた。

『年頃女子だねぇー……』

ぽりぽりもごもごふごふごする兎を眺めながらボヤいていると、隣に女性が二人座る。ちらりと視線をやって飛び上がりかけた。

「兄様が休みなんて云うんですもの。殿方は何をしてらっしゃるのかしら」

「何だか緊急の事態らしいですよ。それもマフィア絡みの」

ナオミちゃんと春野さんだ。逃げようかと思ったが、不自然だし鏡花ちゃんが楽しんでいる中水を差すのもな……

「またマフィアですの？それにしても、Aさんは何処に行ってしまったのでしょう……」

「あの子ならきっと無事だわ」

此処にいるよ！！めっちゃ至近距離！！白目剥くかというレベルで脳内絶叫していると、走り寄って来た鏡花ちゃんにくぃと裾を引かれた。

「……帰る？」

『あ、うん……行こうか』