【文スト】境界の栞 Ⅳ【太宰治】 (ページ36)

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164葉ページ36

《首領室》
『失礼します(CV:杉○智和)』

「……！？嗚呼、Aか……」

『だから何で判るんですか月影でいいです報告書ですどうぞ』

机に紙束を置くと、座っていた首領が顔を上げた。

「……A、君は煙草を吸わない筈だよ？何処でそんな匂いを付けてきたのだね」

どうやら表情と咎める様な口調からして何とは云わないが誘惑したと思われたらしい。衣嚢に突っ込んでいた箱を見せた。

『違いますよ。吸ってみたんですけど盛大に撃沈しました』

「いきなりそれは強いんじゃないのかね……そもそも煙草は身体に良くないよ」

『そういう首領はどうなんですか』

ムスッとして訊くとスッと目を逸らされた。何時もはそんな嘘ヘタクソじゃないですよね！？

『匂いを誤魔化すには丁度いいので。気が向いたらまたやってみますよ。では』

せめてもう少し軽いものを～といった声が聞こえてきたがスルーして下に降りた。
却説、帰らねばならない訳だけど……如何しよう、家がない。真逆寮に帰るなんざ選択肢から抜け落ちてるしお金もホテルに泊まれるだけの手持ちが無い。

『……仮眠室かーそうなるよねー』

それといい加減メイク落としたい視線が痛い。どうしよ、取り敢えず寝床を何とかせねば。寝てるところを襲われるのは遠慮したいし。

「A」

『おー中也、仕事上がり？』

「嗚呼。……お前どうせまた家がないとか云ってんだろ」

『テレパシー？』

「だろうと思ったわ……」

呆れ顔の中也から何かが投げられる。鍵だ。

「手前が気にしねェなら貸してやるよ」

『えっどゆこと？why？』

「一応複数持ってるからな。暫く使ってねェやつだが」

『すっっごい有難いありがと！！』

後でなにかお礼をしておくとしよう、うん。

『何処？』

「連れてってやるから落ち着け」

『いやまあ落ち着いてはいるんだけどね』

頭が上がらない……むしろめり込む……
という事で本部を出て車に乗る。矢張り煙草の匂いがした。

『中也って煙草吸ってるんだね』

「まァな。手前こそ大分重いの持ってるだろ」

『初っ端吸おうと思って断念した』

「阿呆かよ……」

〈全てを識る者〉よ、煙草の吸い方とか知らないのかね？

｛解。強く吸いすぎです。ゆっくり弱く吸って下さい｝

し、知ってた……。

『いい？』

「いいがお前また失敗するだろ」

『んー……判らん』

火をつけ云われた通りに吸ってみる。今度は上手くいった。