【文スト】境界の栞 Ⅳ【太宰治】 (ページ4)

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142葉ページ4

「何か、依頼を熟せばいいんじゃないか？」

『おー、成程。例えば何かある人？』

「待て。平凡な新人ならそれでもいいが、今回の新人は軍警から討伐指示が出ている災害指定猛獣、要するにお尋ね者だ。ある程度の身元隠蔽なら探偵社も不得手ではないが、それでも万一の責任が持てぬ入社前から荒事の現場に放り込むべきではない。社長にもそう云われたのではないか？」

「おー、流石は社長の一番弟子」

治は頬杖をついてそう云った。

「ほぼ同じ事を社長にも云われたよ。うーん、妥当な案ではあるのだけど、もう少し社外の耳目を集めない試験を考えないとね。織田作、残念」

「成程。……なら、社内の厄介ごとの解決は如何だ？」

『嗚呼成る程、社内の厄介ごとねぇ……特にないし、もう偽造しちゃう？それっぽく云うなら───狂言か』

私はスキマから爆弾を取り出す。

「おや、よく出来た爆弾じゃあないか」

『ついでに一寸改造してボタン式にしてみようかなぁ、なんてね』

「いいんじゃあないかい？」

「嗚呼。それなら社外の注目も集めない……だが」

国木田君は立ち上がり治を指さした。

「全員、事の次第を思い出してほしい。今回の新人勧誘騒動は、他の誰でもない太宰が言い出したことだ。違うか？災害指定猛獣などという野蛮な代物を捕縛するでもなく保護するでもなくよりにもよって探偵社に入社させるなどという恐ろしい発想は、ひとえにこのワカメ脳による適当な思い付きだ」

私の発想でもあるんだけど、という声は発さないことにした。国木田君が過労死する。

『……要するに、治が楽するのが気に食わないってことか。でもさ、爆弾ってことは立て籠もり辺りが妥当でしょ？治が犯人役ってどんなハードモードかは国木田君が一番知ってるじゃない。国木田君は何とか乗り切ったけど、敦君にそんな芸当出来るとは思えないな』

「誰かをアシストに付ければいいのでは？」

「成程……それもいいかもしれないね」

ニヤニヤする治とばっちり目が合った。……何か、凄い嫌な予感が……。