【文スト】境界の栞 Ⅳ【太宰治】 (ページ24)

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162葉ページ24

現れたのは谷崎だ。あの襲撃事件こそ無事にこなしたが、その次の依頼で重傷を負い───

「与謝野先生の治療の賜物だな。……谷崎。何度解体された？」

その問いにサーッと血の気が引く谷崎。

「……四回」

「「あー……」」

「敦君、探偵社で怪我だけは絶ッ対にしちゃ駄目だよ」

「……？」

「ギャング、それも多数に丸腰……分が悪いと知れた時点で逃げなかった谷崎が悪い」

「マズいと思ったらすぐ逃げる。危機察知能力ですね〜」

それでも尚真剣な表情の谷崎は、ふと居ると思っていた者が居ないことに気付き首を傾げた。

「あれ、乱歩さんは居ないンですか？」

「何だか鬼気迫る表情で出ていきましたよ？」

「嗚呼、あの様な顔初めて見た」

一体何があったのか───そう問おうとしたが、ふと医務室の方から気配がして会話が途切れる。

「ふァ〜あ……寝すぎちまったよ」

「与謝野さん」

「ああ、新入りの敦だね。どっか怪我してないかい？」

「ええ、大丈夫です」

「ちぇっ」

「(ちぇっ……？)」

……敦が与謝野の治療を受けるのはまだ先のことになりそうだ。

「ところで、誰かに買出しの荷持を頼もうと思ったンだけど……アンタしか居ないようだねェ」

「え！？」

慌てて振り返るが、そこに国木田、谷崎に賢治といったつい先程まで居た筈の面子は忽然と姿を消していた。

「(危機察知能力って───これ？)」