153葉 ページ15
「……お初にお目にかかる。僕は芥川。そこな小娘と同じく、卑しきポートマフィアの狗……ｺﾞﾎｯｺﾞﾎ」
「芥川先輩！ご自愛を───此処は私ひとりでも……ッ！」
芥川君が樋口さんに強烈な平手打ちを食らわせた。あー、痛そ……こういう所本当に似たよね、何処かの上司にさあ。
「人虎は生け捕り、その他は皆殺しにせよという命の筈。逃がしてどうする。……役立たずめ」
「───すみません」
『まあ待ちなよ、私が非能力者相手に逃がす程度の事出来ない筈無いんだからさ……うん、フラグ臭い』
「人虎……？生け捕り……？あんたたち一体……」
「元より僕らの目的は……貴様一人なのだ、人虎。それが護られただ突っ立っているだけとは……とんだ腑抜けだ。貴様の所為で周りが傷つくのだ」
「僕のせいで、皆が───？」
「然り。それが貴様の業だ、人虎。貴様は、生きているだけで周囲の人間を損なうのだ。自分でも薄々気がついているのだろう？」
「……っ！」
「───〈羅生門〉」
二年前より更に進化した〈羅生門〉がコンクリートの地面を抉っていく。
『ほう……』
「僕の〈羅生門〉は悪食……凡るモノを喰らう。抵抗するならば次は脚だ」
「な……何故？どうして僕が───」
敦君がへたりと座りこむ。私は何時でも対応できるように上げていた手を降ろした。
「幾ら貴女でも、これを防ぐのにはかなりの労力を要す筈だ。抜けられぬ訳ではない」
はーん、色々考えたのね……敦君は───ちらりと私を見ると、キッと芥川君を睨んだ。
「うわあああっ！！」
『敦君！』
「玉砕か…詰らぬ」
敦君は初見で〈羅生門〉を躱すと、背後に落ちていた銃を手に取った。
「ほう」
敦君が銃を乱射するが、空間断絶に阻まれる。
「今の動きは中々良かった。しかし所詮は愚者の蛮勇……云っただろう。僕の黒獣は悪食。仮令それが『空間そのもの』であっても」
芥川君、それはいいんだけど……そのポージング何とかならない？首イカれてるっぽく見えるよ！？
「銃弾が飛来し着弾するまでの空間を一部喰い削った。槍も炎も、空間が途切れれば僕まで届かぬ道理」
「な……」
「そして僕、約束は守る」
『危ない！！』
黒獣が素早く駆け抜け、敦君の脚を喰い千切った。
「ぎっ……ぎゃあああああああああっ！！」
敦君の絶叫が路地裏に響く。しゃーない、こうしないと虎の力が覚醒しないからね……出来ればやりたくなかったんだけど。
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作者名：朱菜＠�� | 作成日時：2019年8月9日 2時
