【文スト】境界の栞 Ⅳ【太宰治】 (ページ14)

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そんな会話をする内、人気の少なそうな裏路地に辿りついた。

「なんか……鬼魅の悪い処ですね」

「……おかしい。本当に此処なンですか？ええと……」

「樋口です」

「樋口さん、無法者というのは臆病な連中で───大抵取引場所に逃げ道を用意しておくモノです。でも此処はホラ」

『逃げ場がない上、此処なら銃声が届く事が無く“処分”に向いている定番スポット。違うかな？』

「！」

そう。此処は表まで銃声が届くことの無い、マフィアにおいて昔から裏切り者や切り捨てる部下の処分によく用いられた場所だ。芥川君にも使いやすいよーと教えた記憶があるので、恐らくそれを活かしたのだろう。

「……ええ、その通りです。失礼とは存じますが、嵌めさせて頂きました。私の目的は───貴方がたです」

『……行って、私が片付ける。申し訳ないけど敦君は付き合って』

「え！？」

「あ……はい！」

スキマで谷崎兄妹を避難させる。それでもなお樋口さんは余裕を崩さなかった。

「逃がし応援を待ちますか……ですが無駄です。我が主の為───此処で死んで頂きます」

「Aさん、このままじゃ……！！」

銃撃。展開した結界で弾き、不敵な笑みを浮かべた。

『───甘いよ』

《探偵社事務室》
「おい太宰、いい加減仕事を───」

再び叱責するべく振り向いた国木田。しかし、そこについさっきまでいた筈の太宰は忽然と姿を消していた。

「大変です国木田さん！！」

「谷崎！？」

「路地裏で襲われて……あの樋口って依頼人、ポートマフィアだったんです！！」

「な……！敦と月影は！？」

「未だ応戦してます！」

《路地裏》
『銃なんて所詮玩具に過ぎないよ。幾ら撃とうと私達には当たらない』

「(強い……！)」

「ちっ……」

仁王立ちする私に銃を撃ち尽くした樋口さん。優劣ははっきり目に見えていた。

「……確かに、私では貴女に勝てません。ですが───人虎が逃げていないだけで十分です」

刹那、膨大な殺気と共に黒刃が飛んできた。それを受け流し嗤う。

『───ニ分の遅刻。彼女に云ったんでしょう？五分って』

「───矢張り貴女か」

現れた芥川君はそう小さく呟いた。