【文スト】境界の栞 Ⅱ【太宰治】 (ページ48)

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96葉ページ48

「あそうだ、暗いから駄目なんだよ、照明(ライト)で照らせば」

「誰かがいた時、俺達の存在と居場所が露見する。避けるのが無難だな」

「ふうん」

だよね！！そうなんだよねー！！殲滅潜入任務でも真っ暗闇でやってたもんねー！！ただ暗いだけなら何一つ怖くないんだけど、これは……
幽霊が正体の知れない謎の生物だっていうのは異能生命体と同じ括りってことだ。つまりそれは〈金色夜叉〉とかとお仲間って訳で、別に敵対さえしなければ怖くなんて───

「出たァッ！」

「馘首にするぞ！？」

「いやあ、国木田君があんまり緊張しているようだったから、気紛らわしにね。それに、吃驚したAがくっ付いてくれないかと───A？」

そこで異変に気付いた太宰がAに歩み寄る。座り込んでしまった彼女に触れようと───

『っ……！！』

「あ、一寸A！！」

弾かれる様に走り去ってしまった彼女を追いかけ走る。本気で逃げるのならスキマを使う筈だ、それをしない理由は一体───……
当たりを付けた部屋に入ると、Aは部屋の隅で小さくなっていた。

「一体、如何したの……？」

今度こそゆっくり距離を詰めると、其処で気がついた。自分の腕をきつく抱いて体の震えを無理やり押さえ込んでいる。引き攣れる様な呼吸をしていた。

「……A、君……！」

一目で判った。過換気症候群───過呼吸だ。

「落ち着いて、そう……大丈夫」

一応鴎外の下に居た時に対処法は頭に入れている。暫く抱きしめて背中を摩っていると、Aはゆっくりその身を預けた。どうやら落ち着いた様だ。

『……御免』

「否、私こそ真逆Aが暗い処が苦手と思わなくて……真逆昔から無理してたの？」

『ううん、どっちかっていうと魑魅魍魎の類が……でも、此処まで苦手だったっけ……？』

自身も困惑した表情を浮かべる彼女に、太宰が少し考え込む。

「今の過換気症候群……過呼吸は、極度の不安や緊張、ストレス───過去の心的外傷(トラウマ)で引き起こされるんだ。何か心当たりある？」

少し思索した後、首を横に振る。特に心当たりは無いらしい。隠している様子もなかった。

『…………特に無いかな……』

「そう、ならいいのだけど。……本当に御免ね？」

『キレる気力もないから許す』

「あはは……行こうか。立てる？」

『ん』