【文スト】境界の栞 Ⅱ【太宰治】 (ページ35)

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83葉ページ35

『ただ避けても良かったんだけど、それだと後ろの人間───国木田君とかに当たりかねなかったから。私の能力で亜空間に仕舞ってからもう一回取り出したって訳ですよ』

「亜空間能力者……」

「大丈夫？取り敢えずその傷を何とかし給えよ」

治がそれこそ何処から取り出したんだといった具合の包帯を手早く私の手に巻く。少し血が滲んでいるが問題無い筈だ。

『却説、取り敢えずこのコソ泥を何とかしますか……最寄りの警察署はあそこか』

電話を取り出して掛ける。今まで完全に追われる側だった所為で少し緊張したが、(当たり前だが)特に疑われる事も無く話が付く。ヴンッとスキマを広げれば、その向こう側は指定された牢だ。

「な、何だ……！？」

『はーい行きますよー』

男を牢の向こうへ放り投げ、そのまま閉じる。国木田君はスキマのあった場所に手を置いてみたりしていたが、当然そこは空間が途切れているので何もない。

「男は何処に行った……！？」

『空間をすっ飛ばして繋げてポイです』

「はあああぁぁぁぁ……？」

「まあ合ってるのだよね……」

「嗚呼。間違っては無いな」

そんな二人の言葉に国木田君は理解するのを諦めた様だ。

『全く……何でこんなに舐められるんだか』

「幾分か幼く見えるからだろうな」

『う゛……っ』

「悪意のない分抉れるねえ」

織田作は肯定的な意味合いで使ってるから余計辛い……ッ！

『……それで、何か後の手続きとかあります？』

「あ、否……探偵社の名を出したのなら大丈夫だろう。あとから書類が送られてくる」

「じゃあ帰れるね！A、さっきの本を購いに行こう！」

『それを治に与えるとしれっと死んでそうなので却下』

「えー、違うよ。興味無い？」

『……まぁ、ない事も無いけど』

実際家にはあったしなー……同じく興味で買ったんだけど。

『取り敢えず帰ってその報告書を仕上げないとね』

「えー、今行こうよ」

『報告書書き終わったら繋げてもいいよ？』

「うん、直ぐやる」

(判ってはいるだろうが)まんまと乗せられた治にしめしめと思っていれば、国木田君は有難いのか呆れているのかよく解らない顔をしていた。

「……取り敢えず、済まんな」

『いいよいいよ、慣れっこ』