【文スト】境界の栞 Ⅱ【太宰治】 (ページ4)

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52葉ページ4

『まぁ織田作が際どかったってことは余程のやり手なんだね彼らは』

「俺が掴む場所を予測して予めクレヨンで滑るように仕込んであったのはヒヤリとさせられた。十人いれば銀行を襲えると親爺は言ったが、あと二年もすれば五人でやってのけるだろう」

『十歳前後か。まあ行けるんじゃない？』

「ん、年齢を知っていたのか？」

『あー……まあ目測だよ』

「成程ね。その子供達をスカウトすべきかな」

『先ず芥川君の扱いを何とかすべきだと思うよ私』

「芥川……確か、お前らの部下の」

「芥川君はね、鞘の無い刀剣だよ」

『孰れマフィア最強の異能者になるよ、彼は。芥川君の異能は強すぎるね』

「だからこそ、今は誰かが刃の仕舞い方を教えなくちゃならない。それに彼自身も中々に頑固だ。あのままでは力に振り回されて遠からず自滅していただろう」

『……だからってあれは無いと思うんですけど？』

あの日───私と治は芥川君を拾った時、あまりにも私が拾われた状況と酷似しすぎて苦笑いをこぼしたのを覚えている。

ｰｰｰ
「A、仕事入ったよ」

首領の元から戻ってきた治が私に一冊の書類を差し出す。表紙には何も書かれていないまっさらな紙束。首領が直接伝える機密性が高めの任務である証拠だ。
本当に口外禁止の場合は言葉でのみ伝えられるから、そこまでではないのだろう。

『どれどれ』

ほとんどが白紙だったが、一枚だけ幾つかの写真と場所、時間が記された紙が出てくる。

『ほーん……。今夜？』

「そうだね。序に例の彼のスカウトもしたいな」

『了解』

写真に写っていたのはつい最近提携したばかりの小規模武装組織だ。時間は先週の深夜。何やら取引をしている様子だが、この時間の取引は許可していない筈だ。
つまり任務は───この組織を潰すこと。

『やれやれ……』

放り投げた書類をスキマから亜空間に収納する。

『余計な事をしなければいいものを』

「仕方ないさ。過去を振り返ってもどうにもならない訳だし」

『まあねー。やるからにはキチッとやろ』

そんな話をしたその日の夜。私と治は取引現場である林道に立っていた。てか此処って……
林の影に身を潜めて様子を伺えば、男達が辺りを見回しながら何かを取り出している。

『高性能爆薬……連中、やるなって云ってたのにガン無視か。消す？』

「そうしようか」

その言葉で私は林の影から出て連中の前に立った。