【文スト】境界の栞 Ⅱ【太宰治】 (ページ26)

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54葉ページ26

『(出来るだけ早く復帰出来るようにするからさ)』

「何度も云うが無理はするな。今度こそ約束を守ってもらうからな」

視線を合わせてそう云う織田作に、少し間を置いてからコクリと頷いた。努力はしよう……

『治』

「消毒液かけたら縮むの？」

「ふっざけんなよ手前！」

『おさ……ッ！ゲッホッゴホッ』

無理して声を出そうとしたら喉が消し飛ぶかと思った。咳が止まらなくなったのに先に気がついた中也が若干慌て気味にペットボトルのお茶を渡してくれた。

「わ、悪ィ」

「ほらー、中也が怒鳴ってるから」

「手前が煽ったんだろうが……！」

「太宰、流石によくないぞ」

「む……」

不服そうな顔をする治を涙目でジトッと軽く睨むと流石に響いたらしい。

「御免ってば……」

「判ればよろしい、か？」

一つ首肯。早く喋れるようになればいいんだけどねー……

「ま……俺はそろそろ戻るわ」

『(ありがと)』

「元気でな。彼奴らには俺から云っとく」

帽子を手に立ち上がった中也へ口パクで伝えると、彼はニッと笑って去っていった。

「中也の癖に生意気……」

『？』

「中也、多分私達がこれから何するのか半分勘づいてるのだと思うよ。確か明日から暫く長期任務って話だったし」

『(嗚呼……)』

確かにそれなら元気でなという言葉の意味がしっくり来る。見逃してくれるんだ……

『(どちらにせよ、復帰しないと話にならないから頑張る)』

「根気よくね。しっかり治してからだよ」

その後、死ぬ程しんどいリハビリを何とか乗り越えて復帰出来たのは数ヶ月後の話だった。
……その合間の休憩時間にマフィアの顔見知りがよく来てくれたお陰なのか所為なのか、休みが休みじゃなくなったのは一寸中也を恨んだけど。