#47 疑惑 ページ47
(リヴァイ視点→リヴァイとエルヴィンの会話への導入)
有無(うむ)を言わせず、急患室に連れてこられた。
Aが一緒だったから、素直に連れてこられたものの、部屋に入った瞬間、ハンジに「回れ右」を指示された。
ハンジ「…リヴァイ。そのまま入ったら、文字通り摘まみ出すから」
言われて初めて、自分のドロドロ具合に気がつく。
雨に降られた上、跳ね返った泥がこびりついて、我ながら酷い。
言われるままにシャワーを浴びて、怪我の手当てを受けた。
冗談みたいにでかいガーゼを頰に貼られて、顔の筋肉が動かしにくいことこの上ない。
…そんなに酷く、怪我したか?
Aを連れ戻すことができた、という事実に、ただひたすら安堵して、自分の身体のことなど、ついぞ忘れていたらしい。
もっと自分を大事にしろ、とハンジには散々文句を言われたが、
今の俺にとっての「大事」が、目の前で目を覚まさないんじゃ、どうしようもないだろう。
ーーーA。
帰ってきてから随分長く、こいつの横たわるベットの横で、眠っている顔ばかり見つめている。
別に腹も減らねえし、仕事をしろ、と誰もつつきに来ないから、飽きもせずに隣にいる。
血や泥なんかで汚れちまっていた顔は、今はもう、清潔に拭き取られていつも通りだ。
手を握るのは憚られ(はばかられ)るから、苦しそうにするたび、指先で髪をかきあげてやっている。
そうすると、少し幸せそうに微笑むから、その度に俺は、Aの頸動脈(けいどうみゃく)の反応を確かめずにはいられない。
ーーー怖い、のだ。
帰って来られた実感が、未だにわかねえ。
こんな感覚は、久しぶりだった。
それ故、そばに居たくてたまらなかった。
ーーー平和、だ。
Aのベッドにもたれかかって、珍しく、心ゆくまでのうたた寝をした。
日も沈んだ頃、痺れを切らしたエルヴィンが、ついに急患室にやって来た。
眠ったふりを貫いて、やり過ごそうとしたけれど、勝手にAの髪を撫でようとするから、飛び起きて振り払ってやった。
エルヴィンは笑顔を崩さずに、手負いの獣でも、なかなかのものだ、とか何とか抜かしやがる。
ーーー放っておいてくれ。
俺はそういったけれど、そういうわけにもいかないんだ、と、エルヴィンは椅子を持参して、俺とは反対側の、Aの傍に陣取った。
ーーーどうやら、特別大事な話らしい。
観念して、俺は身を起こす。
相変わらずAは、目を閉じたままだ。
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りりこ(プロフ) - かたちなにさん» はじめまして、コメありがとうです!展開がややこしいお話なので、気に入っていただけてこちらも嬉しいです!糧にして、頑張って続き書きますね〜笑 2幕以降もお楽しみいただければ、幸いです! (2016年10月15日 13時) (レス) id: f30cb6bd23 (このIDを非表示/違反報告)
かたちなに(プロフ) - 見入ってしまった! 話が深くてとても面白い! 興味本位で読み始めたけどワクワクが止まりません笑 とても素晴らしい作品!! (2016年10月15日 8時) (レス) id: 750b6b2d88 (このIDを非表示/違反報告)
りりこ(プロフ) - ハルさん» こちらこそ、混乱させてしまって、ごめんなさいね(泣)精進いたします!応援&コメント、本当にありがとうございました! (2016年3月11日 17時) (レス) id: b097ba1888 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - そうでしたか!細かな説明ありがとうございます!どちらの作品も楽しく読まさせてもらってます!これからも応援してるので頑張ってください (2016年3月11日 15時) (レス) id: 3eef4ca069 (このIDを非表示/違反報告)
りりこ(プロフ) - ハルさん» というイメージです。ある種の「パラレル展開」という傾向ですね。長々と連投、すみません。あちらの作品は、「甘々展開だけが読みたい!」と思われた時にでも、立ち寄っていただければ、幸いです。コメントありがとうございました! (2016年3月11日 12時) (レス) id: ac8a3e0fe6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りりこ | 作成日時:2015年7月10日 2時