#36 壁外調査準備 ページ36
(リヴァイ視点)
ーーー「壁外調査準備」の存在を知っている人間は、調査兵団の中でも案外少ない。
本番の「壁外調査」のたいてい2ヶ月ほど前にエルヴィン主導で行われることが多いのだが、
幹部級と一部の優秀な兵士のみで
運搬航路の確認、
連絡手段の微調整を行って
とっとと帰ってくるだけだから、
いつもの訓練の延長だと考える奴も多くいる。
実際、馬で壁まで戻ってこられる距離にしか出向かねえし、その間の巨人遭遇率も、ほぼ、一桁(一桁)を下回り続けているくらいだ。
ーーーここ数年の「壁外調査準備」における戦死者は、だから、当たり前のように「ゼロ」。
それを「油断だったか」と問われれば、まぁ、その通りだったと認めるしかない。
俺はAを抱えていた分、他の奴らより少しはピリピリしていたが、
そうは言っても本番じゃねえし、何処かで気が緩んでいたことは確かだ。
ーーーそういう全部が、仇(あだ)になったのだと思う。
壁を飛び出したばかりの午前、空はすこぶる晴天だった。
馬を駆りつつ、いつもの癖で空を見上げて、ふと、俺は半馬身(はんばしん)後ろを走るAを見遣った。
今日すべきことは、壁を出る前に全部伝えてあったから、特になにか言いたいことがあった訳じゃねえ。
もっと言うなら、これから組んで一緒に動くのだから、配置についてから物を言えばいい。
だが、なんとなく、胸騒ぎを覚えた。
虫の知らせ、とかいうやつかもしれない。
とにかく、俺は振り返った。
リヴァイ「…A！」
A「はいっ」
緊張気味の顔で、Aが答える。
リヴァイ「…肩の力を抜け。俺がいるから、お前は死なねえ。…大丈夫だ。いいか、絶対に離れるな」
A「…了解です！」
ついでに見遣った部下たちの顔も、覚えている。
みんな、いい顔をしていた。
ーーー次に控える「壁外調査」に備えて、今日は今日の働きを精一杯全う(まっとう)しようーーー、
そんな決意を、しているかに見えた。
それなのに。
俺は今、降りしきる雨の中を、たった一人で逆走している。
午後になって急に降り出した雨が、視界を遮って、俺の行く手(ゆくて)を嬉しそうに阻みやがる(はばみやがる)。
リヴァイ「……クソッ！」
午前のやわらかさが、嘘みたいだった。
Aの顔、部下の奴らの顔が、頭に浮かんでは消えていく。
(…どうか…どうか全員…、無事でいてくれ…！)
轟く(とどろく)雷に、馬が高く嘶いた(いなないた)。
#37 壁外調査準備 （出発前）→←#35 夜までの攻防（こうぼう） 4
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 956人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「進撃の巨人」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りりこ(プロフ) - かたちなにさん» はじめまして、コメありがとうです！展開がややこしいお話なので、気に入っていただけてこちらも嬉しいです！糧にして、頑張って続き書きますね〜笑 2幕以降もお楽しみいただければ、幸いです！ (2016年10月15日 13時) (
レス) id: f30cb6bd23 (このIDを非表示/違反報告)
かたちなに(プロフ) - 見入ってしまった! 話が深くてとても面白い! 興味本位で読み始めたけどワクワクが止まりません笑 とても素晴らしい作品！！ (2016年10月15日 8時) (レス) id: 750b6b2d88 (このIDを非表示/違反報告)
りりこ(プロフ) - ハルさん» こちらこそ、混乱させてしまって、ごめんなさいね（泣）精進いたします！応援&コメント、本当にありがとうございました！ (2016年3月11日 17時) (レス) id: b097ba1888 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - そうでしたか！細かな説明ありがとうございます！どちらの作品も楽しく読まさせてもらってます！これからも応援してるので頑張ってください (2016年3月11日 15時) (レス) id: 3eef4ca069 (このIDを非表示/違反報告)
りりこ(プロフ) - ハルさん» というイメージです。ある種の「パラレル展開」という傾向ですね。長々と連投、すみません。あちらの作品は、「甘々展開だけが読みたい！」と思われた時にでも、立ち寄っていただければ、幸いです。コメントありがとうございました！ (2016年3月11日 12時) (レス) id: ac8a3e0fe6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りりこ | 作成日時：2015年7月10日 2時
