僕と私の契約恋愛

20 ページ20

.



エレベーターを最上階まで上がり、重役の部屋のドアが数枚。
一番奥の［社長室］へと向かった。


いつも来て頂いている宮田社長の会社には、初めて訪問する。






直人さんがノックし、落ち着いた声で「失礼します。」と伝えた後、ゆっくりとドアを開けた。







人「この度は何の報告もなく、」





「Aちゃんじゃないか！！！！！」





「……こんにちは、宮田社長。
お邪魔させて頂いております」





「なに、どうしたの？わざわざ僕の会社に来てくれたの？
Aちゃんが来てるなら、迎えに降りたのに」







社長椅子から立ち上がり、直人さんのことは見えていないかのようにスルーし、真っ直ぐこちらへと来て
私の手を掴み、勝手に握手を始めた。








「宮田社長…、本日はご挨拶に伺いました。
弊社の副社長に就任する、片岡直人です」








その言葉に、ハッとして









「副社長！！
社長の息子さんかな？」







首だけ副社長へ向け私の手をブンブンと握手したまま、離さない。


宮田社長、いつも以上に距離が近いんですけど。







人「はい、息子の片岡 直人です。
名刺受け取って頂けますか？」







名刺と共に菓子折りも渡すが、すぐに自分の秘書へと渡し、また私の所へ戻って来た







「今日は、一緒にご飯、行けるかな？」




「…宮田社長。
うちの副社長がご挨拶に伺ったんです。
ご飯のお誘いに来たんじゃ、ありません」



「嗚呼…、そうだったね」






そっと手を離してもらった






人「いつも芦原のことご贔屓に、有難うございます。」






そう言って今度は副社長が、宮田社長の手を取り、握手を強引に進める。






「え、あ、あぁ。」







人「………強引に、握手をされるのはどんなお気持ちでしょうか？


芦原は私の秘書に異動しました。
まだ発表はしていませんが、婚約もしています。
僕の大切な人です。

私情を挟み、彼女に強引に触るようなら
今後一切の接触と禁止しますし、最悪の場合、契約は一度白紙に戻します」






「君の、それも…私情じゃないか」





人「宮田社長が私情を挟まなければ、私も挟むことはありません」








握手していた手をやっと離し、私の横へ並び直し、








人「それでは、今後も宮田社長と、素敵なお付き合いが出来ますように」







笑顔でお辞儀をし、社長室を後にする副社長に
必死に着いて行った。








.

21→←19

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す