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｢......これからどうなると思う？こんな廃墟に身を隠したところで、いつかは見つかる。アキラの治療もしたっていうお医者さんも、さっさと撤退したよ。後はこうすればいいってメモだけ残してね。私さ、貴将が恐れていたものになるのかな。｣
有馬貴将｢すべての人間が喰種になる。お前は最初の犠牲者だ。傷つきすぎたその体も、人間であれば本来は耐えられないもの。喰種になろうとするお前だからこそ、その体に耐えられた。｣
｢耐えられたなら結構だよ。貴将、もう一度聞くよ。これからどうなると思う？｣
有馬貴将｢きっと生きていける。失ったものも......必ず取り戻そう。｣
｢......うん。静かになったら、桜を見たいね。海にも行きたい。キャンプもしたい。雪だるまもつくりたいな。昔から興味なかったこと、全部やりたい。｣
有馬貴将｢たしかに。君、外に出たがらなかったからね。｣
｢七五三ってやつもやりたい。｣
有馬貴将｢ジジイとババアにはもう無理なやつ。｣
｢じゃあ......｣
ここで殺してしまえば、彼女にとって一番辛い現実を与えずにすむ。君は何も知らないまま、俺を恨みながら死んでいく。それが一番いい結末なんだろう。
｢貴将と式を挙げたい。聞いた？ブジン、結婚するんだって。しかもトーカちゃんの親友と。目を閉じる前に、そんなことが耳に入ったんだ。｣
有馬貴将｢羨ましいと思った？｣
｢まあね。その式で、私は改めて今まで紡いだ縁を知ることになる。その縁はきっと、何よりも美しいんだろうね。｣
未来を楽しそうに語る彼女を......
｢......泣いているの？珍しいね。あなた、何があっても泣かない人だったでしょ。｣
子供を失ったばかりなのに、悲しみを我慢している彼女を、殺せない。
有馬貴将｢今にも......声を荒らげてしまいそうだ。｣
｢今だけはそうしなよ。ここにいるのは、私とあなただけ。こんな私のために泣いてくれてありがとう、貴将。｣
違うんだ。君のために泣いているんじゃない。
君を殺そうと思った俺が気持ち悪くて、泣いているんだ。
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作者名：琲世 | 作成日時：2022年12月15日 13時
