パンの味 ページ15
旧多二福｢えっ、は？腹の子？｣
｢郡、例の書類助かったよ。｣
宇井郡｢なんでここで言うんだ......？｣
｢どうせこいつにはバレてるから。旧多一等、君って私の代わりだったんだね。最初からやり直したかった両親は、どうも君のことを気に入っていたらしい。｣
旧多二福｢......その二人が死んだことで、僕は普通の生活を得られなかった。｣
｢得られなくて結構。何より私はね、私を見てくれなかった両親が許せなかった。虐待でもなんでも受け入れるから、今まで通り私を愛してほしいって。なのに......両親は私を、お前がいた家へ送ろうとした。そっちの方が幸せって、マジで言ってんのかよって。だいぶキレたよ。｣
旧多二福｢そうですか。僕の夢も両親の人生も壊して、なにか得られたので？｣
｢この通り、自由を得られた。髪フェチ両親のことなんざ、もう知ったことか。あっ、話はなに？｣
旧多二福｢えー......本来なら貴女を捕まえようと思ったんです。貴女を餌に有馬貴将を呼び出せないかなーって。僕って頭が悪いから、そういう外道手段がないと戦えないんですよ。｣
｢嘘つけ。｣
旧多二福｢この様子だと全部見抜かれていそうですし、それは諦めました。ですのでこれだけ伝えておきます。｣
｢うん？｣
旧多二福｢気が向いたら戻ってくれて構いませんよ。こちらの権限で、貴女の名前だけは捜査官リストから除名していません。｣
｢してくれていいのに。貴将と愛の逃亡生活、めちゃくちゃ楽しいもの。パンごちそうさま！またいつか！｣
旧多二福｢......なんじゃそりゃ。｣
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作者名：琲世 | 作成日時：2022年12月15日 13時
