もう届かない (ページ3)

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「白ヒゲを倒して名を上げろーっ!!」

太陽がちょうど真上にきた頃。それなりに実力のある海賊が、何を思ったのか白ヒゲの船にまで手を出そうとしていた。

見張り台で日記を書き直していたAは、自分のところにまで戦いが広がらないことをちらりと確認し、紙面に目を戻した。

「……また素知らぬ顔かよぃ」
「マルコ?どうした?」
「…Aの野郎……いや、なんでもねェよぃ」
「A?」

一番隊隊長ことマルコは、見張り台を一瞥して、ぼそりと呟く。エースに言葉を拾われたのは驚いたが、さして問題ではないので、誤魔化した。

それが仇となった。

「Aーっ!!そんなとこに居たら危ないぞー!!!」
「おい、バカヤロウ!」
「え?」

「見張り台に誰か居るぞ!!」
「一人のようだな、まずは目を奪え!」

エースの善意からくる呼び掛けによって、Aの居場所は知られてしまった。
マルコはAが戦闘に参加しているところを見たことがなく、実力を知らない。ただ、線の細い肉付きのけして良くない体からして、非戦闘員であると思っていたので、この状況は些か面倒であると感じた。

相手の実力はたかが知れているが、数が多い。攻めに転じれば潰せないほどではないものの、Aという守る対象があっては、攻めきれない。

「エース、ここは任せたよぃ!!Aを下ろしてくる!」
「えっ、あ、おぅ!!」

不死鳥になって見張り台まで一気に近寄る。縄梯子を登る敵は、追い付けなかった。
Aは危機的状況であることに気づいているのか、はたまた気づいていながらいつもの無反応でいるのか、文字を書く手を止めることはない。

「いつまでボサッとしてるんだよぃ!そこまで敵が…」

マルコが苛立ち紛れに声を掛けた瞬間、嫌な感触が羽をかすめた。

「見ろ、不死鳥マルコだ!!撃ち落とせ!」
「こっちには海楼石があるんだ!あるだけ撃ち込め!!」

「ちっ…」

一旦距離を置くしかない。そう判断するが、的外れな方角から発砲音が聞こえた。躊躇が生まれ、その隙に敵からの一斉射撃が始まった。

「くそっ」

避けきれない。

……しかし覚悟していた痛みはなく、気付くと見張り台に引きずり込まれていた。

「……は」
「さっさとここに入れば良かっただろう」
「っ!!てめェが襲われると思ったんだよぃ!だから下ろそうと…!」
「そうか。迷惑をかけたな」

Aは日記をマルコに持たせ、見張り台の手すりに足をかけた。両足で立ち上がり、格好の的となる。