もう届かない (ページ2)

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本日モ快晴ナリ。航海ニ障害ハナク……

「サッチ、今日の昼飯…」

バシャッ
食堂に勢いよく入ってきた白ヒゲの二番隊隊長、エースの足が机の脚にぶつかってインク壺が倒れ、日記の上に黒い海が広がる。幸い机にまで零れはしなかった。

「A?……あ、わり…」
「……」

首を振り、日記からインクが滴り落ちないように背表紙を下にして閉じる。席を立ち、他に汚れがないことを確かめて食堂を出る。

エースはその後ろについて歩く。

「次の島で弁償する!!」
「……」
「悪気はねェんだ、ただ周りを見てなくて…」
「……」

Aは一切口を開かず、ただ日記の処分について考えていた。それでもエースが食い下がるので、ついに振り返った。

「そんなに大事だったのか……ぶっ…なんだ、急に止まって」
「弁償はしなくていい。処分だけしてくれないか」
「え?いいのか、捨てちまって…」
「……」

頷く。必要なことを告げ、日記を渡すとAはすたすたと歩き去った。

残ったエースは、日記を処分するには自分の能力で燃やすのが一番だと思いつき、甲板に出た。

「おい、エース!!お前、甲板の掃除忘れてただろ!」
「サッチ?…あ、掃除……」
「なんだよ、思い出して来たんじゃないのか…ま、なんでもいいからさっさと掃除しろ!!」
「わかったよ!」

サッチに掃除のことを言われ、日記はとりあえず後回しにした。ちょうど空いた酒樽があったので、中に隠した。

夕暮れ時。ようやく広い甲板の掃除が終わり、エースはへとへとであった。戦闘では無尽蔵の体力を発揮するエースだが、掃除や報告書といったいわゆる雑務では発揮されることはなかった。

昼飯を食べ損ねたことが頭を埋めつくし、日記のことは微塵も覚えていなかった。