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阿部「さっき。電話で説明してたじゃん。」
むぅっと不満そうな顔。
そうだった。
「あ、別になんとも…」
阿部「どっち？」
「へ？」
私の話を遮ってちょっと怖い顔で、聞かれる。
阿部「どっちの腕。掴まれたの？」
「ひだり…」
わたしの左手を手に取り、腕を観察される。
「でも、ほんとなんてことなぃ、、」
阿部「あ。ここ？ちょっと赤くなってる。」
「ぁ。」
気づかなかったが、少しあざっぽくなっていた。
阿部「…本当になんともない？」
じぃっと私の目を見てくる。よくわからなくて、目を泳がせる。
スッ…「…ッッ！」
あざになってるそこに触れられ、急な痛みに思わずぎゅっと目をつぶってしまった。
阿部「…嘘つき。」
低めの声にびっくりして目を開けると、立ち上がってどこかにいってしまった。確かに嘘をついたのは申し訳ないけど、今まで気づいてなかったし、急に触れるからびっくりしたんだもん。
よく見たら掴まれた手のかたちのようなあざになってるのに気づいて、ドクンと、心臓が跳ねた。
「うっ、わ。」
今さっき、気持ちを切り替え得たばかりなのに。むりだ。記憶だけなら自分を誤魔化せると思った。でも、こうはっきりと形として残ってしまったら。見て見ぬ振りなんて、できない。
視界に入らないようにすれば、、と服の袖を少し引っ張って視界に入らないよう隠す。袖の長さ足りないから、本当気持ち程度。楽しかったはずなのに、トラウマのように嫌な記憶の方が鮮明で、どうにも苦しくて、近くにあったクッションに頭を伏せる。こんなあざくらいすぐ消える、大丈夫だと何度も何度も思うのに、苦しくなる一方だった。
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作者名：紫 | 作成日時：2023年8月4日 2時
