過去の代償.11 ページ45
あなたside.
人事「……私のこと、覚えてない、よね…？」
よしっと気合を入れて、でもまだ少し不安そうに話す彼女。確か年齢はいくつか上だった気がする。
「ごめんなさい。どこかでお会いしてましたか…？」
人事「いや、覚えてなくていいの。その方が…」
「その方が…？」
人事「私ね。
前職、あなたと一緒なの。」
「…？！」…ﾄﾞｸﾝ‼︎
心臓を抉られたような感覚に手がビクッと震えた。すかさず阿部さんに強く手を握られる。
つまり
それは
過去を知られている
ということ、で
その事実に、息が詰まりそうになる。
人事「……わたしも、標的にされた側だった。」
「ぇ、」
人事「何も抵抗できずにいた私に、あなたは何もしないという選択をした。その勇気と強さ。優しさ。本当に尊敬してる。…でも、そのせいで私以上ののことがあなたに起こってしまった。」
もしかして…と思い当たる人が、ひとりいた。
悪夢の時の、囲まれてたあの女性…？
よかった
元気だったんだ
助けられてたの、かな
よかったと思うのに。あの時、自分さえ我慢すれば、そう思って、たくさんの人を助けられなかった分、苦しまなきゃいけないと思って、過ごした時間が、肯定された気がして、なんともいえない感情が広がった。
人事「何もできぬまま、時間だけが過ぎて、気づいたらあなたはもういなくて。」
人事「何もできなかったのは私の方。守ってくれたのに。後悔しかない。助けられなくて本当にごめんなさい。」
「いやっ、そんな…」
.
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作者名：紫 | 作成日時：2023年12月30日 11時
