088話 ページ39
一通り歩き回った私が準備室に帰ると先生が苦しんでいた。
『一颯!』
柊「っ!…もう、帰って来たのか」
『そりゃ、私なんだかんだ言ってここ好きですから』
柊「あ、ケータイ取って」
私は机の上で震えている先生のケータイを取る。
画面にはファイター田中と表示されていた。
え、田中さんだ。
田中≪おっつー。テレビ見てるよ、大変そうだな≫
柊「相変わらずフランクですねぇ」
田中≪そう簡単に性格は変わらねぇよ。それより、1つ聞きたくて。
なんで社長を巻き込んだ?お前のせいで社長は路頭を迷うことになるんだぞ・
それでもお前は…自分のやってることは正義だと言えるのか?≫
柊「正義かどうかは、分かりません。でも、これが…俺の切り開いた道なんです」
『私の切り開いた道でもあるんだよ!』
田中「その声……Aちゃんか!?」
柊「こら、A」
田中「Aちゃんも巻き込んだのか?」
『私は巻き込まれに行ったんだ。お父さんのこともあるし』
田中「なるほどな…"お前のその手で道を切り開け"懐かしいなぁ」
柊「俺はヒーローになれませんでした。でも、それでよかった。子供たちの夢を壊したくありませんから」
先生は田中さんの後を継いでヒーローになるはずだった。
テレビの中で戦う子供たちのヒーローに。
でも、今は苦しみながら、病気と闘いながら、私たちのヒーローになろうとしている。
柊「田中さんは、いつまでもヒーローでいてください」
田中≪ふふ…、言われなくても、そのつもりだ。Aちゃん、大事にしろよー≫
柊「え、なんでそれ……」
田中≪俺、勘は良いほうだからさっ。じゃあな≫
そう言って通話は切れた。
まぁ、相楽さんを巻き込んだことまで気づいた田中さんだもんね。
なんとなく、察しがついたんだろうけど…改めて言われると恥ずかしいな。
柊「うぅ……っ」
『先生、薬飲んだ?』
柊「飲んだけど…おかしいな。てか…っ、Aも汗凄いぞ」
『あっ…、私達2人ともボロボロだね』
柊「そうだな……じゃあ、Aには課題を出す」
『げっ……簡単なのにしてね』
柊「最後に俺に絵を描いてくれないか」
『え?そんなんでいいの?』
まだ真っ白なキャンバスを見て先生が言った。
『分かった。提出期限は?』
柊「提出期限はー…なし。しいていうなら、俺が生きている間に提出してほしいかな」
『かしこまり!』
私は少し体調が落ち着いた先生を抱きしめた。
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唯颯(プロフ) - ハナさん» 大丈夫です (2021年1月13日 4時) (レス) id: f647fc3f6b (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - 質問大丈夫ですか? (2021年1月10日 21時) (レス) id: 7b57897ee4 (このIDを非表示/違反報告)
唯颯(プロフ) - スライムさん» ありがとうございます!頑張ります! (2020年1月28日 23時) (レス) id: a45fde35bc (このIDを非表示/違反報告)
スライム(プロフ) - 面白いです!更新頑張ってください (2020年1月28日 23時) (レス) id: 028b55ef6b (このIDを非表示/違反報告)
蒼炎 - 楽しみです!!!\(//∇//)\ (2020年1月28日 22時) (レス) id: 874e279780 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:唯颯 | 作成日時:2020年1月20日 23時