【3年A組】Espoir 2 - 卒業 - (ページ19)

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068話ページ19

坪井≪確かにお前は、誰よりも努力してた。毎日毎日、暗くなるまで泳ぎ続けて、筋トレもして…俺が教えてきた中で一番頑張ってたよ。

でもな、それが行けなかったんだ≫

そこから坪井先生は病院で聞いた水越さんの病気について話した、

“運動誘発性致死性不整脈”

過度な練習により不整脈を起こし

そのまま続けると湿疹や心肺停止になる恐れがあり、

最悪、死に至る病気。

私は、澪奈に胸を痛そうに抑えていたという言葉と

一生懸命遅くまで練習していたという話で

その可能性を疑った。

病気には詳しいってわけじゃなかったから調べた。

水越さんの母親は「自分が言っても無理するから」という理由で

坪井先生に託した。

ただ、坪井先生の伝え方が悪かったために誤解を生み、水越さんをさらに追い詰めた。

初めてその事実を知った水越さん。

坪井先生は医師に掛け合った。何とか水泳を続けさせてやりたいと。

でも、ダメだったと。普段からの水越さんの努力を知っていた先生もつらかったはずだ。

水越「なにそれ……全部私のためだったって言うの？」

坪井≪でも、それが結果的にお前を苦しめていたんだな。本当に申し訳なかった≫

水越「ずるいよ…なんで今更…そんなのないよ」

坪井先生が画面越しではあるが水越さんに頭を下げた。

先生は私を離すと眼鏡をかけてPCをたたんだ。

ここからが本番だから。

柊「水越、今の話を聞いても、まだ坪井先生を疑うのか」

水越「知らなかった！私の体のこともっ、先生が苦しんでいたことも！何も知らなかった！！」

『なのに、水越さんは坪井先生に逆恨みをして…この動画を撮った』

「どうしよう」という水越さんに

「動画は投稿してないよ」と私は伝えた。

あの時、結城さんが投稿しようとする直前で放送をかけて回収したから。

動画は先生のケータイに移しただけ。

水越「良かった……」

先生はそう言ってへたり込む水越さんの足を蹴って入り口の扉に押し付けた。

私もその後ろから言葉を投げかけた。

『なにが……よかったの？』

水越「先生……。藤枝……さんっ」

柊「お前が、この動画を流そうとしたことに変わりはない。違うか」

水越「でも…」

柊「でもじゃないんだよ……この動画が世間に広まっていたら、坪井先生がどんな目に遭っていたのか…よく考えたのか？」

私は、この人たちは宇佐美さんの一件で

学んだかなと、心に刻み付けたかと思っていた。