【3年A組】Espoir - 卒業 -

036話 ページ37

さて、それはホントにたまたまだったのかって話になるわけで。


兵頭「たまたま会場にね……たーまーたーまー」

里見「試合が中止になって暇になったから見に行っただけだよ」


そう言って机の上にしゃがみ自分を疑う兵頭君のオデコにデコピンをした里見君。

しかし、その言い訳を素直に受け止めるはずもなく


光永「俺は暇でも水泳なんて見ないけどね」

兵頭「俺も―」

『何か目的、あったんじゃないの？』

里見「なに、お前らも藤枝も俺のこと疑ってんの」

『なぜか私だけ名指しされてーら』

光永「おい、パクんな」


「サッカー部の試合が中止になったのは本当だよ！」と言って

ピンクのカーディガンが可愛らしい花岡さんがスケジュール帳を見せる。

いや、そこは疑ってないよ。

「海斗は嘘なんてついてない」
「そうだよ、海斗君がそんなことするわけない」
「海斗があんな動画を撮る理由なんてどこにもないし」

と、言った具合に里見君を庇う女子の方々。


石倉「はいーでましたぁ！里見親衛隊！」

兵頭「よ！親衛隊！！」

花岡「そんなんじゃないから！マネージャーなんだから、ここに書いてあるだけ！」

石倉「へー、でもお前、里見と別れてサッカー部のマネージャー辞めたんじゃなかったっけ？」

花岡「なわけないでしょ！てか今それ関係ないし」


あちょくりあいがひと段落したところで

お気づきでしょうか。いつもは騒ぎだす甲斐君が妙に大人しい。

こんなこと口に出しては言えませんが。


諏訪「全部口に出てるつーの。……まぁ、確かに。甲斐ーさっきからなんで黙ってんの？

いっつも最前線でギャーギャー喚いてるくせに」

甲斐「うるせぇ、俺たちで犯人探しなんてしても意味ねぇだろ。答えんのは刑事なんだから」

『まぁ、確かに』

諏訪「あんたも納得しちゃダメでしょ」

『あ、ごめん……』


振り返りざまも美人な諏訪さんと話す横目で、私は見逃してませんよ？

里見君が口角上げて、ホッと一息ついたのを。


『あの、諏訪さん』

諏訪「なに？」

『全く関係ないお願いなんだけどさ』

諏訪「だから何よ」

『今度描かせてくれないかな、諏訪さんを』

諏訪「はぁ？なによいきなり」

『美人だから……あと、衝動的に描きたくなったからかな？ダメ？』

諏訪「っ……考えとく」


私は諏訪さん、そんな悪い子じゃないと思ってる。

女子のリーダー的な感じではあるけど、きっと繊細。

私は、それを描いてみたくなった。

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