滝口幸広さんの件について ページ24
病室にいる私。周りにいるのは、元テニミュキャストの方がほとんど。
そこは個室で、ただ1人、ベッドに横になっている。
その姿はまるで、眠ってるようにしか見えない。
おーい、って言ったらまだ眠そうな顔で、何だよ、まだ5分経ってないじゃん。と文句垂れながら起きそうな。
そんな、顔。
だけど、その人は目を覚まさない。永遠に。
冗談めかした顔も、オカン臭い物言いも、全部全部見れなくて、
ただ永遠に、面白くもない目を閉じた安らかな表情で、眠ってるだけ。
今この瞬間も私は思う。これは夢なんじゃないか、って。
……信じられない。
いつもいつも、仕事の日は私が起こしていた。
テニミュでの仕事を卒業して寂しいと思っていた私に彼は、人あたりの良さそうな笑みを浮かべてこう言った。
「俺、朝起きれないんだよねー。」
それから私は、彼の目覚まし担当になった。私の仕事は遅番なので朝は暇で、ちょうど良かった。
それから彼と話したり、彼を交えてテニミュキャストで集まって出かけたり、いろいろした。
私は元テニミュキャストと関わる機会がなく、彼はそんな私を気遣ってくれたのだろうか。
本当に優しかった。バカがつくお人好しと言えるほどに。
そんな彼が。滝口幸広が。……亡くなった。
悲しくて悲しくて仕方ないのに、涙は出なかった。
せめて一思いに泣かせてくれれば良いのに。神様は非常だ。
……けど。
「奏に涙は似合わないよ。どんなに悲しくても、奏だけは泣かないでほしい。」
彼が望んだと言うのなら。
泣かないでおこう。……そう、思った。
*滝口幸広さんが亡くなったと知り、この話は書こうと思いました。どうか、安らかにお眠りください。ご冥福をお祈りします。
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檸檬けーき。(プロフ) - 精一杯頑張ります! (2019年12月27日 22時) (レス) id: 31d6ef12c3 (このIDを非表示/違反報告)
もも - 斬新で面白いです!更新頑張ってください! (2019年3月20日 10時) (レス) id: 04df7ed0c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:檸檬けーき。 | 作成日時:2019年3月15日 21時