( 怖いもの無し ) ページ40
your side
『そんなの、無理に決まってるじゃないですかっ!!』
扉の向こうから、大きな声が聞こえて来て、びくっとする。
何か、あったのかな。
恐らく、広報担当のそこそこ偉い人。
『うちは、伝統ある球団なんです!!
そんなことファンが許すはずがありませんっ!』
確かに…タイガースとジャインツの伝統意識は高い…
『し、しかしっ、』
『……考えさせて下さい。
他の部署とも話し合います。』
「……Aさん、っている?」
「っはい!」
「ちょっと来てもらっていいかな。」
まさかの私…嘘でしょ、
なんかしたかな。あぁ、ペーペーなのに、なにかやらかした?
「ちょっと、ここで待ってて。」
廊下を歩いてしばらく、扉の前で待たされる。
「………入って、」
少し扉が開いて中に入るよう促される。
「、失礼します。」
うわぁ、名札の肩書きがこわいよ、
部長とか、取締役とか、
「Aさん。あなたをここに呼んだ理由、分かる?」
「いえ、存じ上げません。」
「……、ファイターズがあなたと選手の婚約を公表したい、と申し出て来たわ。」
「っ、」
「でも、うちは伝統ある球団で、ファンの層も厚い。
うちのファンは少しチームが低迷したぐらいじゃ離れたりしないわ。
でも、あなたのせいで球団の言われようが悪くなるかもしれない。」
「はい」
「あなたのせいで、チームに迷惑がかかるの、」
「部長、なにもそんな言い方しなくても……」
「黙ってなさい。私は彼女に話してるの。
あなたから彼を説得できない?
何も、別れろとまでは言わないわ。
ただ、彼に考え直させてほしいの。」
「………失礼ですが、私にはできません。
正直、その話、今日初めて聞きました。」
「「「!?!?!?」」」
「彼には彼なりの考えがあってそうしたんだと思います。
私は、彼についていくと、決めましたから、
私は彼がそうする、というのならそうします。
球団に迷惑がかかるのは分かっています。本当に申し訳ありません。」
「……行っていいわよ。あとはこっちで話し合うから。
ただ、クビは覚悟してなさい。」
「はい。失礼します。」
なぜか、怖くなかった。
ここで働けなくなるかもしれないのに、
ようやく叶えた夢が散ってしまうかもしれないというのに、
卓が決めたことなのだと思うと、何1つ怖いものなんてなかった。
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作者名:璃央 | 作成日時:2017年8月13日 16時