( いくさがやってきた。 ) ページ32
中島 side
あの女が現れたのは、8月の中旬に入ってすぐだった。
試合が終わってすぐ、
着替えて、室内練習場に残って練習している時、
「……中島さん。」
「え、あ、はい。」
やけに綺麗に着飾った女の人。
取材なんて入ってたっけ？
こんな時間に？
「練習お疲れ様です、」
「あ、はい、ありがとうございます、」
で、だれ？この人、
「……終わったら、お食事でもどうですか？」
「ぇ、今からっすか？」
「はい」
「すいません、自分、撮られたくないんで、そういうのはちょっと…」
「……彼女さんに、知られたくないから、ですか？」
「は？」
「……阪神タイガースの球団職員さん、A、Aさん。」
ただ事じゃ、ないと思った。
なにか、背筋が凍る感じがした。
「……なにが、目的ですか。」
「かわいらしい方ですよね。
笑顔が素敵で、タイガースの選手とも親しく、」
こいつ、なにもの。
「……………」
「今日だけでも、お食事、どうですか？
Aさんのことは口外はしませんから。」
「………、」
仕方なくといえば仕方なく。
俺の頭が悪いゆえに、
その場でどうすればいいか、咄嗟に浮かばず、
この女の言いなりになってしまった。
ただ、血の滲むような努力をして、
採用され、仕事をがんばっているAのことを思うと、
焦りが膨らむばかりで、
何も言えなかった。
それからのことはほとんど覚えていない。
ただ、車で来ていたから烏龍茶を飲んで、テキトーにご飯を食べて、
Aで俺を釣ろうとしたのに、Aの話を全くしようとしないのは
少し引っかかったけど、まぁ、今日だけだし、って思って。
………翌朝、起きた時には見ず知らずのベットで。
服も着ていたし、1人やったけん、
ああ、酔いすぎたんかもしれんって思って、そのままノーマークでホテルから出た。
それから、数日後のことだった。
週刊誌に載ったのは。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 436人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「プロ野球」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：璃央 | 作成日時：2017年8月13日 16時
