恋煩い２【すとぷり】 (ページ32)

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楽屋に戻ると、Aはソファで熟睡していた。

こ「おかえり。
…お姉さん、なんて言ってた？」

さ「Aの時間が無いこと、気付いてた。」

全員、驚きの声を漏らす。

さ「Aが海に還ったあと、うちの前の海に来てって言っておいた。」

り「俺も1度ちゃんと話してみたい。Aのお姉さん。」

る「僕も。」

な「結局、俺たちひとことも喋れなかったしね。」

疲れもあってか、起きる気配のないAを抱えて荷物派ころんたちに任せて先に用意していた車に乗る。

出待ちしていた数人のファンに見られながら後部座席に寝かせる。

「あ、あの…おとめちゃん…。」

さ「…なに？」

本来なら返事なんかせずに無視するところだが、呼ばれたのが俺の名前ではないところが気になったのだろう。
返事をしてしまった挙句、話を聞いてしまった。

「えっと、あの…私、おとめちゃんが活動はじめた時からのファンで…覚えてもらってるんです…だから最後は絶対自分で手紙…渡したくて…。」

さ「これ？そういうことなら渡しとくけど。あいつ寝てるから。
でも何入ってるかわかんないし、申し訳ないけど信用できないからおとめが受け取るより先に俺が開けるけど。いいよね？」

「はい、ぜんぜん大丈夫です。あの、それと、おとめちゃんに伝えて欲しいんですけど…」

そこまで言ったとき、後ろで待機していた友達らしき子達が近付いてくる。

さ「待って、その人数それ以上近付いて来ないで。」

「ごめんなさい…
おとめちゃんに、本当にお疲れ様でした。体、大事にして、今まで出来なかったこととか、周りの目なんか気にせずに楽しんでねって、伝えてください。本当にありがとう…って。おとめちゃんが居なかったら、私たち、出会えてなかったから…本当に感謝してるんです…。
よろしくお願いします！
あ、さとみくんも、お疲れ様でした！めっちゃかっこよかったです！」

そう言って深々と頭を下げ、すぐに去っていった。

さ「なんだよさとみくん＂も＂って…。」

本当に愛されていたんだ。

そう思えた。

さ「これで、良かったんだよな。」

汗が乾いた頬をそっと撫でる。

俺の手をきゅっと握り、目は閉じられているが優しく微笑んだ。

1年後の今日。
彼女は次の誕生日は確実に迎えられない。