第7章 ページ31
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正直驚いた。
しばらく言葉が出なかった。
何故それが分かったのかは置いておいて、やっぱり顔も見たくないという2人の言葉は嘘だった。
さ「持って半年だと思います。最短1ヶ月だと、聞きました。」
「そうなんですね…。」
さ「あの…Aと最後にきちんと本音で話をしてあげてくれませんか?Aのためにもなると思うし…」
「それは出来ません。
…ちゃんと話してしまったら、そこで本当におしまいになってしまうから。」
彼女は悲しそうに笑った。
その顔は最近Aが笑う時の顔にそっくりだった。
この2人には最後まで救いがなかったんだ。
「Aの葬式も、呼ばないでくださいね。もう合わせる顔がありませんから…。」
さ「A、家の前の海に散骨してくれって言ってるんです。だから、良かったらうちにいらしてください。Aがだいすきな海一目でいいので、見てください。」
「わかりました。
本当に、ありがとうございました。
Aのこと、最期までよろしくお願いします。
もうあの子にとってはあなた方が家族ですから。」
さ「はい。わかってます。
最期の最期まで絶対幸せにします。
だから安心してください。」
「では、もう行きますね。迎えの車が待っています。」
さ「はい…。」
彼女はまた、悲しそうな顔で微笑んだ。
会場の出口まで案内した俺に向かって深く一礼してから、目を合わせることなく黒のベンツに乗り込んだ。
俺も、車のエンジン音が聞こえなくなるまで頭を下げ続けた。
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作者名:sky | 作成日時:2019年11月7日 21時