. ページ28
中島 side
"どんなに辛い思いをしても、
あなたのことが好きで仕方ないんです"
そう言った彼の声は細くて、
やっぱり、幼い頃から多くの人から愛されとるんや、と実感する。
だけどね、そろそろ、潮時なのかもしれない、と
俺も思うんよ。
「………やっぱり、やめとく。
Aは一緒に住む俺にすら、肩のことを隠してきた。
それどころか、
あんなに感情豊かに
笑って泣いて、卓、卓って俺の後ろをついてきとったのに、
いつの間にか、
名前も呼んでくれなくなって、
心から笑った顔を見せてくれんくなったと。
……すぐ我慢するっちゃけど、
ほんとは、痛みに弱くて、
少し転んだだけでも
少し実習で失敗しただけでも、
すぐ涙目になる子なのに、
あれだけの怪我隠して、平気な顔して、
俺の前で泣かんくなったと。
大学生に混じって笑っていたり、
ドームで仕事をしている姿を見たりすると、思うんよ、
もしかしたら、
俺の元を離れる時が近づいているのかもしれん、
俺は、社会人で、仕事をしていて、Aより年上で。
でも、Aは、違う、
今から叶える夢がある、
これから、あの性格の良さゆえに、
また辛い思いをするかもしれん、
やけど、あの子はがんばり屋さんやけん、全部乗り越えていくと思うんよ。
俺に、縛られて欲しくない。
AはAの世界を広げてほしいんよ。」
「……………」
「手術終わったら、お見舞いは行くけん、
教えてくれる？」
「………はい、」
「紗樹くんも、忙しいと思うっちゃけど、
Aのこと頼むね、
泣いとるときは泣かしてやって、
すぐ強がるけど、ほんとは泣いて
俺ら困らせたらいけんと思っとるだけやけん。
幼馴染やけん、分かっとると思うっちゃけど、」
そのあと紗樹くんと俺は連絡先を交換して
紗樹くんは、いきなり来てすみません、と深々と頭を下げて帰っていった。
紗樹くんと話している途中で覚悟をきちんと決めたつもりでおったっちゃけど、
家のいたるところに、Aがいて、
Aの優しさが溢れてて、苦しくなった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 403人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「プロ野球」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
イチゴミルクキャンディ - 切なくて、泣いてしまいました....。更新頑張ってください！応援してます！ (2017年8月10日 8時) (
レス) id: 0d36d453a8 (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - 切なくて涙がとまりませんでした…たんさんの作品すごく大好きです。応援してます！更新頑張って下さい！ (2017年8月9日 7時) (レス) id: 305e1dd2a5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうちゃん(プロフ) - 一気に読みました。続きが気になります。。。 (2017年8月9日 3時) (レス) id: 25f87f55c8 (このIDを非表示/違反報告)
夏樹 - すごく切なくて、心臓がきゅってなっちゃいました…。更新、頑張って下さい!まってます! (2017年8月8日 20時) (レス) id: f498594667 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：璃央 | 作成日時：2017年8月8日 13時
