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仕事_141 ページ45

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漣「そろそろ御暇(おいとま)するか」



男1「はい」





話に一段落ついたところで、漣と役人が立ち上がった。



Aがはっとして問いかける。





『なぁお前、名前はなんて言うのだ』



男1「私ですか?」



『ああ。聞こうと思って、ずっと聞けずにいた』



男1「そういえば名乗っていませんでしたね。私は……」





ふと言葉を止めて、役人はAを見返した。





男1「Aさんは、名前の知らない人を変わった風に呼んでいましたよね。虎の子とか月の人とか…」



『ああ。そうだが』



男1「是非、私にもそのように名前を付けてほしいです」





Aはきょとんと役人を見上げる。



対する役人はいたって真剣な表情をしていた。





薬研「おいおい、それは俺らの特権だぜ」



鯰尾「そーですよ〜!Aに名付けてもらうなんて、嫉妬しちゃいますよ。ね?兄弟」



骨喰「…俺は……別に…」



鯰尾、堀川「(不機嫌が顔に出てる…)」



『好きなように呼んで良いのか?』



男1「はい」




とおせんぼうをしていた薬研の脇を通り、役人の正面に立つ。



Aは役人をじっと見つめて、やがて何かを思いついたように笑みを浮かべた。





『なら、(りょう)はどうだ?』



男1「りょう…」





Aは役人の手をとり、その手のひらに指で“椋”と書いた。





『お前の瞳の色、黒かと思っていたがよく見ればほんの少し、紫が入っていた』



男1「えっ、そうなんですか」



『ああ。椋実(むくのみ)色と言ってな。そこから取って、“椋”だ』





どうだ?と嬉々として問いかけてくるAを見て、不覚にも顔が熱くなる。



名を付けて呼ばれるとは、これほどに嬉しいものだったのか。





椋「はいっ!ありがとうございます」



全員−椋「(いいな……)」



漣「…ずるい。俺にもくれ」



『お前は(さざなみ)の音が好きだからそれにしたのだろう?だったら私は別の名では呼ばないぞ』



漣「むっ…」





漣はフイと顔を背ける。



それを役人__もとい椋が少し誇らしげに笑ってなぐさめた。


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作者名:葛の葉 | 作成日時:2018年12月16日 16時

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