仕事_134 ページ38
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結界の崩壊時、彼らには見えていない、もう一つの光景があった。
漣「……」
漣は空を仰ぎ見る。
薄暗い曇天に、白銀の龍がいた。
漣「(貴船の、龍神…)」
上司が言っていた。会議にまだ来ていないと。
結界を破壊したのは、あなたか。
視線で問いかけると、龍神の笑う気配がした。
そのまま、天へと飛翔していく。
息をついて視線を落として、漣は軽く目を
一期達のいる反対の森、はるか遠くの雪原に、ぽつんと人がいた。
漣「(あれは…
視線に気づいた巫女は閉じられたままの瞳を漣に向けると、
黄泉の化け物の最期を見届けていたのだろう。
漣「(まったく…君は神々によく好かれる)」
ふっと笑って、漣はAたちのもとへと駆け寄った。
＿ ＿ ＿ ＿ ＿ ＿ ＿ ＿ ＿
天界。中断されていた会議が始まろうとしていた。
「龍神がいらしたぞ」
「随分とまた、遅い」
凄烈な気配が神気を伴って舞い降りた。
ほのかなきらめきが集約したと思うと、人身を取った貴船の祭神が宙に浮遊していた。
そのまま、何かに腰かけるような体勢をとる。
「龍神よ。此度は何故遅れた」
龍神「道中、面白いものを見つけてな」
「また寄り道ですか……おお、巫女殿。黄泉の封印はどうでした」
音もなく巫女が姿を現した。
巫女を見つけた白蛇が腕をつたい肩に登る。そして甘えるように頬にすり寄った。
瞳を僅かに開いた巫女は、右足を引いて膝を軽く曲げる。
巫女「ご心配をおかけしました…封印は無事です。地上へ出た妖も、退治て頂きました」
「頂いた、とは」
巫女「はい。…あなたの配下に」
Aの上司に微笑を向ける。
対する上司はぽかんと
上司「え、え…？」
龍神「あいつだ。お前の、愛しの部下だぞ」
上司「うそん…待って、あの子瘴気に呑まれてないよね？」
龍神「ああ、呑まれて気を失っていたな」
上司「はあ？！」
龍神「あいつの傍にいた付喪神も困っている様子だったから、まぁそれとなく助けておいた。礼として今度私の話し相手となれと、あいつに言っておけ」
上司「えー…」
龍神は喉の奥でくっくっと笑う。
上司は壮大にため息をつき、その様子を見た巫女が楽しそうに笑った。
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作者名：葛の葉 | 作成日時：2018年12月16日 16時
