仕事_44 ページ27
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ほつぎ side
ちょうど亥の刻になった頃、ようやく一日目が終わった。
と言っても、軽く挨拶して、本丸内を歩き回っただけ。
俺の部屋は審神者部屋の二つ隣にある。
妻戸を開けると、すでに荷物が運ばれていた。
「…………」
後ろ手に戸を閉め、布の面をほどく。
この面は自分の霊力を抑える役割もあるらしい。
部屋全体に結界をはり、ようやく一息ついた。
「……最初は、大人しくしておくかぁ」
あの審神者、Aだっけ、俺のことをただの見習いだって信じきってるみたいだし。
政府も馬鹿だなぁ、あんな弱そうな女の子が仕切る本丸に、よりによって俺を置くなんてさ。
「……あ、あった」
荷物の中から“茶封筒”を取り出して破り捨てた。
あの時、俺が盗ったことにも気づかないなんて、よほど鈍感なのか、危機感がないのか…
「……そうだ……♪」
じゃあその危機感のなさを利用させてもらおうかな。
まぁ、もう既に一つだけ呪をかけてるんだけど。しばらくあのままでいっか。
「確かこっちの箱に……………あ…」
あさっていると、コトンと何かが落ちた。丸い、手持ち鏡だ。
もう記憶にない、母の形見。
鏡の面を上にして転がったそれに、自分がうつる。
「…っ！」
咄嗟に鏡を掴み、箱の奥に詰め込んだ。
嫌だ。
赤い、血の色をした瞳なんて、見たくなんかない＿＿＿
＿ ＿ ＿ ＿ ＿ ＿ ＿ ＿ ＿ ＿ ＿ ＿ ＿ ＿ ＿
NO side
子の刻の半ば、皆が寝静まった頃。
出陣組が身支度を終えて集合していた。
堀川「そろいましたか」
獅子王「おう！」
三日月「では参ろうか」
一期「行ってまいります。A殿」
『ああ……気をつけて』
心なしか不安そうに見えるAに、薬研が優しく笑いかける。
薬研「心配すんな。無事終わらせてくる」
獅「俺らが帰ってくるの待ってないで、先に寝とけよ？」
堀「日が昇るまでには帰ってきます！」
『………(ｺｸﾝ』
五人の姿が光に消えてもなお、Aはしばらくそこを動かなかった。
『……あ』
何かを思い付いたのか、Aは一度部屋に戻り、すぐにさっきの場所に戻ってきた。
右手には防寒用の袿、左手には辞書。
…そう、Aは最初から、彼らが帰ってくるまで寝るつもりはなかったのである←
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作者名：葛の葉 | 作成日時：2018年5月17日 0時
