【刀剣乱舞】独り消え逝く運命なら【勘違い成り代わり】

卍心の鍵二十個目卍 ページ21

粟田口派と打ち解けてきた頃、主様が上座から大広間に響く声量で着席を促した
その声に机へと視線を向けると温かな食事が並んでいる、ホカホカと湯気をあげる白米や種類まではわからないがとても食欲をそそる香りを漂わせる焼き魚
お味噌汁はワカメと豆腐が見える
そして僕が1度だけ食べたことがある肉じゃがが器に盛られていた


主「それじゃ、食べるとするか！手を合わせて...せーの」


「「いただきます！」」


「!!...ぃいただきま、す」


全員の口から揃って発せられる言葉に驚きながらもしっかりと復唱し、慣れないながらに箸を使って恐る恐る口に含む
ゆっくりと咀嚼すれば、ほくほくの芋に染みた煮汁の旨みが口いっぱいに広がった
思わず目から涙がこぼれた、1度しか食べたことがないはずなのに鮮明に覚えている"あの味"によく似ていたからだ

そこからは何も考えずに、気分が悪くなってもひたすら肉じゃがを口に押し込んでいた
何でなのか、そんなの僕自身にもわからない
おいしかったから...懐かしかったから...
...寂しく、悲しくなったから

僕の様子に気づいた周りの人たちはただ微笑ましそうに僕を見守っていた、お茶をそっと差し出してくれる人やえずきそうになれば背中をさすってくれる人もいた

この本丸に来て初めての食事は、温かくて懐かしくて
...ちょっぴりしょっぱい、記憶に残る味だった


｢ごちそ、さまでした...｣


燭｢お粗末様でした、デザートは食べられそう...?｣


燭台切さんの言葉に首を横に振る
少し無理して押し込みすぎたせいでちょっと...いや、かなり気分が悪い
申し訳ないけど今回は無理そう...


燭｢そっか、今日は頑張ってたくさん食べたし仕方ないね｣


よく頑張りましたと優しく微笑まれそっと頭を撫でられた、思わず身を引きかけたけどその手の優しさと温もりに受け入れてしまった
受け入れた手は不思議と反発心を抱くようなものではなく、これが母性のなせる技なのかと思った
...男性相手に母性は変か、父性?


主｢白魔、食い終わってから少しだけ俺の部屋に来てほしいんだが｣


少し躊躇い気味にかけられた声にうなづいて手を合わせ、ごちそうさまとだけ零して主様の元へと向かった

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